「馬力KO」で米進出に弾みを-。ボクシングのWBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(24=大橋)は12日、同級2位リカルド・ロドリゲス(米国)との5度目の防衛戦(5月21日、有明コロシアム)に向け、横浜市内のジムで練習を公開した。下半身強化のための2度の合宿を経て、尻回り、太ももが太くなり、拳に伝えるパワーが格段に向上。9月に予定する本場米国デビューへ、馬のような足腰からの一撃でアピールする。

 ミットを打ち抜く重低音が昼下がりのジムに響き続けた。井上のミット打ちの相手を務めたのは元東洋太平洋王者の弟拓真。いつもの父真吾トレーナーはリングサイドで見守る。その理由は…。大橋会長が言う。「今回は初めて、『手が痛い』と。パワーが相当大きく上がっているようです」。前日、この日とミット打ちを回避した父は「右ストレートでやられて。皆さんも受けてみてくださいよ」と苦笑。その右手首にはテーピングが巻かれていた。

 井上は「ボクサーらしくないですよね」と自らの下半身を評する。細い足と小さい尻の分、上半身に大きく筋肉がつくのが1つの理想体形とされる。それには当てはまらない。「怪物」の異名を生む強打の源は、馬のような太い足腰にある。今回は「(V4戦で)下半身のブレを感じた」とさらに重点強化。砂浜、階段ダッシュを繰り返した2度の合宿で鍛え上げ、「成果が出ている」と拳に確信がある。さすがに減量中で3週間前の合宿時よりサイズダウンはしたが、ヒップ85センチ、太もも50センチは、163センチ、現在約55キロのボクサーとしては際立つ大きさだ。

 9月には米国での試合が待つ。その前の関門となるV5戦。ロドリゲスは手数が多く接近戦でラフに振ってくるファイターになる。前評判は勝利濃厚だが「勝って当たり前の試合ほど怖いものはない」と緩みはない。見せるのは油断ではなく、敵の意識を「断」つ一撃。「どう勝つか、ですね。米国へ向けて、アピールしたい」。そのパワーで、海の向こうまで驚かせる。【阿部健吾】