<プロボクシング:WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦>◇8月31日◇東京・日本武道館

 3度目の世界挑戦となったWBA世界スーパーフライ級7位清水智信(30=金子)は、世界2階級制覇の同級王者ウーゴ・カサレス(33=メキシコ)を2-1の判定で下して新王者となった。清水の戦績は19勝(9KO)3敗1分け。

 待ち焦がれていた瞬間だった。全身の力が抜け、リングに膝をつきながら、祝福のコールを浴びた。大粒の涙が止めどなくほおを伝う。自らのボクサー人生をかけた、3度目の世界戦。「今まで僕には、自信というものがなかった。努力は報われました。やっと、念願がかなった」。清水は腰に巻いたベルトを慈しむように、そっと触れた。

 2階級制覇王者に、真っ向勝負を挑んだ。相手の強打を両腕で受け止めると「カウンターで合わせてみせる」と間髪入れずに反撃。8回、前に出て相手をロープ際に追い込むと、左ジャブを皮切りに左右のボディーブロー、フックを5連続で打ち込んだ。パワーを誇る王者に、計140回のスパーリングで追究したスピード連打で勝った。

 道のりは、険しかった。世界ランク入り直後の07年4月、タイに乗り込んで王者ポンサクレックに挑み、7回TKO負け。日本王者ではなかった当時、周囲の視線も厳しかった。08年も日本王者となった直後に内藤に挑戦。8回までポイントで優位に立ちながら、10回に左フックを食らっての逆転KO負けを喫し「ボクシングから離れて、ゆっくり考えたい」と一時は現役引退を真剣に考えた。

 09年6月21日、清水を奮い立たすために、静恵夫人(29)たっての願いで結婚披露宴を行い「家族のために、もう1度世界を」と出直しを誓った。昨年は2月以降の半年間、実戦を離れて集中的なウエートトレで体をいじめ抜き、4度防衛した日本王座も返上して退路を断った。リングサイドで見守った夫人は「この3年間は長かった。ずっと、実力的に負けてないと信じてました」と涙した。

 次戦は同級1位・亀田大毅との初防衛戦が有力。金子会長は「防衛後はフライ級、ライトフライ級でも世界を取らせたい」と“逆3階級制覇”へ夢を広げた。がけっぷちから頂点へ。清水が、栄光への扉を開けた。【山下健二郎】