<特集・UFCがやってくる!!(1)>

 12年ぶりの日本上陸となる米総合格闘技UFCの144大会「UFC

 JAPAN」(日刊スポーツ後援)が26日、さいたまスーパーアリーナで行われる。今回、日本人8選手が出場する世界最高峰の舞台を紹介する。第1回と2回はUFC参戦歴があり、WOWOWの中継でおなじみの元総合格闘家・高阪剛氏(41)が登場。日本人でただ1人、旧PRIDEヘビー級王者ヒョードルに勝った「世界のTK」が、攻防のポイントを解説する。【構成・山下健二郎】

 総合ルールの戦いは、すべての格闘技技術を導入できる。指先と手のひらが露出し、打撃に加えて相手をつかみやすいオープンフィンガーグローブを着用。ボクシング、キックといったスタンディング(立ち技)での打撃や投げ技、グラウンド(足の裏以外がマットについた状態)での関節技や絞め技の攻防が繰り広げられる。さらに試合場は、金網で囲まれた「オクタゴン」と呼ばれる正八角形のケージ内。高阪氏は「特徴を踏まえた戦いに技術が凝縮している」と、それぞれのポイントについて解説した。

 ◆構え

 総合格闘技の構えは、ボクシングとレスリングの中間です。ほぼ立った状態でパンチを当てやすいボクシングと、重心を低くしてタックルを仕掛けやすいレスリング。腰が高すぎるとタックルに行く前に重心を下げなければならず、無駄な動きでスキが生じる。腰が低すぎれば、打撃が届かない。どちらにも対応する“中間の構え”なのです。

 ◆パンチ

 オープンフィンガーグローブは110~117グラムで、ボクシングの約半分です。衝撃吸収剤も少なく、素手の感覚に近い。そのため「とにかくパンチを放てばダメージを与えられる」と思われがちですが、実際は違います。ほぼ拳1つ分しかヒットさせる面積がなく、こめかみ、あご、耳の後ろといった急所を正確に当てなければ効かない。もし当てどころが悪ければ、自分の拳を痛める可能性もあります。同様に守る側も、両腕を上げるガードでは顔を覆いきれません。パンチの軌道を予測して“手のひらではじく”のが基本。攻守ともに「針の穴に糸を通す」高い技術が不可欠なのです。

 ◆グラウンド

 基本的に、相手からテークダウンを奪って上になった選手が有利です。重要なポイントとなるのが、UFCで認められている「ひじ打ち」。上になった側は、ひじを相手の顔へ突き出した状態で、左右に腕をスライドさせて打撃します。狙いは3つ。(1)ダメージを与える(2)目尻の皮膚を切る(3)スキを突き関節技に移行する-。下の選手は背中をマットに押し付けられているため、頭を前後や上下に動かせず、横に振ってかわすしかありません。それを追い掛けるようにしてひじ打ちが襲います。脇を空けてガードしても、頭まで上げた両腕は逆に、関節技を狙われやすいのです。

 ◆金網際

 オクタゴンを取り囲む金網際の攻防は、マットを縦に起こした“グラウンド”の感覚に近い。相手を強く押しつければ、マットで相手の上になるのと同じで、関節技や絞め技を狙えます。金網に相手の背中を押し付けたままマットに座らせれば守備力を半分以下にでき、圧倒的に有利です。ただし守る側の「金網を使って立つ技術」が進歩しています。攻め手の頭を自分の頭より下に押し込む反動を利用して、腰や背で金網をよじ登るようにして立ち上がる。頭の位置の取り合いが、攻防の見どころです。

 ◆高阪剛(こうさか・つよし)1970年(昭45)3月6日、滋賀県草津市生まれ。中学から柔道を始め、専大卒業後の94年にリングスでデビュー。98年にUFC初参戦し、通算3勝3敗。PRIDEなどで活躍し、04年に初代パンクラススーパーヘビー級王座を獲得。ヒョードルら強豪と戦い「世界のTK」と呼ばれる。06年5月のPRIDE無差別級トーナメント1回戦でマーク・ハントに敗れて引退。総合格闘技ジム「ALLIANCE-SQUARE」主宰。現役時は181センチ、99キロ。

 ◆UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)ブラジルで行われていた何でもありの格闘技「バーリ・トゥード」をモデルに、93年11月に米デンバーで第1回大会を開催。日本では97年~00年に計4回実施。01年からズッファ社が運営。現在はヘビー級からバンタム級までの7階級制。試合は5分3回戦で、タイトル戦とメーンは5分5回戦。ジャッジ3人が採点し、KO、1本、判定で決着。急所攻撃、頭突き、髪を引っ張る行為、背骨や後頭部、のどへの打撃、上から打ち下ろすひじ打ち、グラウンド状態の相手頭部へのキックや膝蹴りなどは禁止。選手はオープンフィンガーグローブとトランクスのみ着用可。