村上春樹氏(67)が作家を始めた聖地・東京・渋谷区千駄ケ谷の鳩森八幡神社では13日夜、今年で3回目となる「村上春樹氏ノーベル賞文学賞カウントダウンナイト」が開催された。

 村上氏が受賞を逃した瞬間、会場からは「ハルキスト」と呼ばれるファンのため息が漏れ、涙ぐむファンもいた。

 イベントを主催した千駄ケ谷大通り商店街で「ブックハウスゆう」を営み、イベントを中心となって仕切る斎藤佑さん(71)は、歌手のボブ・ディランが受賞したとの一報に、失望と驚きをにじませた。「予想の外れの外れの外れくらいに思う。春樹さんは日本の作家でもあるけれど、世界の大作家なんですよね。分かってもらえないのは、残念でなりません。来年は、多分、ボブ・ディランにあげたんだから、春樹さんにもあげなくちゃいけないと…来年に期待しましょう。どうもすみませんでした」と言い、集まったファンに頭を下げた。

 村上氏は1974年(昭49)、国分寺でジャズ喫茶「ピーターキャット」を開店し、76年に同店を千駄ケ谷に移転した。斎藤さんが毎年用意する号外新聞によると、村上氏は78年に大好きな神宮球場の外野席でプロ野球ヤクルトの試合を見て応援していた最中に、同球団のヒルトンがヒットを打った際に「小説を書こう」と思い立ったという。鳩森八幡神社についても、82年にいけばな小原流が発行する冊子「挿花」に寄せた「私の緑地図 村上春樹」の中で「出発点は千駄ケ谷の鳩森神社である。僕は去年の夏までこの神社の隣に住んでいた。(中略)千駄ケ谷という土地で僕がいちばん好きな場所である」とつづっている。

 15歳の時から千駄ケ谷に在住し、カウントダウンに駆けつけた女優吉沢京子(62)は、朗読まで行ってイベントを盛り上げた。それだけに「残念…ガッカリです。ボブ・ディランが意外。それなりの功績があるんだから、すばらしいんですけど…文学賞でしょ? そっちもショック…芸能人、歌手もそういう賞を取る時代になったのかなぁと。審査基準は何なんだろうなと正直、思いました」と肩を落とした。それでも「知らない方たちも、平和主義の心とか、村上さんの良さを分かってほしいですね。来年も、めげずに(カウントダウンに)協力させていただきます」と前を向いた。