日本ボート協会が14日、20年東京五輪のボート、カヌー会場の変更案に挙がっている宮城県登米市の長沼ボート場では「世界選手権と変わらない」と主張し、東京都の海の森水上競技場での開催を訴えた。変更案を提案する都政改革本部のメンバーと都庁で面会後、木村新理事長と原大理事が記者団の取材に応じた。

 -聞き取りで、都側とどんな話をしたか

 原氏 「海の森」コースのレガシー利用の考え方が中心だった。

 -競技場の見直しの話があり、知事も明日視察する。競技団体(NF)としての気持ちは

 原氏 もともと五輪は世界最高のスポーツの祭典。当然、選手はそういう気持ちで東京に来る。1つの選手村で自分の競技以外の選手とも幅広い交流をして、いろんな刺激や気づきをもらうのが、大きな目的だ。五輪はそういうことを通じて、世界を広げることになると思う。そこに五輪の意味というものがある。もう1度ご認識いただきたい。世界から来る選手の気持ちを第一に考えるべきだ。それが、アスリートファースト。その点からいうと、コストがかかることは、大変大きな問題だが、海の森でもう少しコストを下げられないかをまず先に考えるのが筋。コース変更について選手の気持ちや、我々競技団体へのひと言も相談もない。突然マスコミの中で、世論を誘導されているようで大変残念だ。

 -リオ五輪カヌー・スラローム男子カナディアンシングルで銅メダルの羽根田卓也が、選手だったら東京でやりたいと発言した。ボート協会の選手は

 原氏 選手には「海の森」の具体的な情報がいっていないことは確か。戸田に非常に郷愁がある競技者がいるし、我々も戸田には郷愁があるが、例えば(埼玉・戸田近隣の)彩湖でやりたい意向が強い人が「海の森」の悪口みたいなものをずいぶん言っている。しかし、世界では海のコースはいっぱいある。五輪が海で実施されたことも当然ある。(海の森では)風の問題も、すべて科学的にシミュレーションしていただいた。選手がもう少しそこを理解すれば、あれだけの施設ができるのは、ボート選手なら誰でも喜ぶと思う。

 木村氏 リオに行った選手やスタッフに話を聞いているが、羽根田と同じで、やはり東京で大会に出たいと。選手村から競技場に行って、選手村で他競技や他国の選手との交流を深めたいと。私どもも、そうしていただきたい。

 -長沼は東京から離れており、コスト削減をすれば「海の森」が結果的に安くなると言う話もある。理事長としては、どう思いをぶつけたか

 木村氏 原理事が言うように、東京五輪なので。東京で選手村に滞在し、選手村から競技に行ってほしい。アスリートファーストの観点からいっても、長沼は遠い。ある意味、世界選手権と変わらない。五輪とは言えないと訴えた。なんとか「海の森」でやってほしい。

 -コスト面は

 木村氏 コスト面は私たちNFの立場ではあまり言えないが、長沼は基本的に仮設がメインになる。仮設になれば、五輪が終われば全部撤去される。レガシーとして何も残らない。公設設備として「海の森」でやってほしいと申した。

 原氏 コスト面でいうと、プレ五輪も含めて約1年間。長沼でやるとなると、そのためにお金をかける。そのお金は、1年たつと廃棄されることになる。「海の森」は恒久的に使えるコースになる。今、戸田は世界的に非常に混雑した状態で、まともな練習もできないとなれば、当然、海の森は次の中心的なコースになる。戸田も昭和15年(1940年)に出来て、もう80年になる。「海の森」も100年単位で使われる。同じコストを、国民の税金をかけるとなれば、それだけ長く使える方にかけた方が、税金も生きた使い方ができるのではないか。

 -長沼の約300億かけての仮設は、協会としては高いか

 原氏 額の判断はしかねるが、1年で廃棄することと、100年使えることに同じ金をかけるなら、普通はどっちにかけるかということになると思う。

 -同本部からの話はどのようなものだった

 木村 レガシーについてですね。都民のためになるかと聞かれた。現在の競技人口や一般市民の活動、東京都ボート協会の方にも出てもらった。東京都のボートの状況を説明した。

 -100年単位でということだが、調査チームはむしろ、大会後の維持費などの計画が出ていないという話をしている面もある。見合うだけの使われ方ができるのか。維持費は

 原氏 「海の森」自体が東京都の所管。ボート競技団体としてそこでやることが中心になる。レガシーとしてどう使うか、東京都はいろいろな試算をされていると思う。

 -海で五輪というが、過去の例は

 原氏 アテネは海、リオも汽水。戦前のロス五輪、シンガポールのジュニア五輪、ジェノバではU23の世界大会をやった。国内でも、10弱くらいの海のコースがある。

 -アテネは湖ではなかったか

 原氏 我々は海と聞いている。そのあたりは詳しくは分からない。