2020年東京五輪・パラリンピックの3会場見直し問題で29日、4者のトップ級会合が行われ、東京都の小池百合子知事(64)が、有明アリーナか横浜アリーナかで揺れるバレーボール会場の結論をクリスマスまで先送りした。会議では大会組織委員会の森喜朗会長(79)と激しい論戦。国際オリンピック委員会(IOC)からも「立候補ファイル時にやるべきこと」と怒りを買った。ボート、カヌー・スプリント会場は江東区の「海の森水上競技場」に決定、宮城・長沼案は見送られ事前合宿地に利用される。水泳会場は同区「五輪水泳センター」に決まった。

 フルオープンでないと嫌だ-。情報公開を武器とする小池氏の強い要望で開会直前に完全公開が決まったIOC、組織委、都、政府の4者協議。3会場の結論を出すはずだった会議の冒頭で、小池氏は「有明、横浜に関してはクリスマスまで時間猶予をいただきたい」とバレーボール会場の「先延ばし」を申し出た。

 政府関係者も会議直前まで「どうなるかは小池さんにしか分からない」と話していた通り、腹案を先制攻撃として投げつけた。行政協議としては異例の全公開が「小池VS森」の生論争を白日の下にさらした。

 森氏は会合で「クリスマスまでに何をおやりになるのか」「横浜市が迷惑している」などと追及したが、小池氏は「詳しくは言えないが、(横浜市に)歓迎してもらっている」と反論。横浜案についてIOCなどからも苦言を呈されたが「できない理由を集めるのは簡単。最後までできる理由を追及する」と語った。

 一方の森氏は「迷惑」と言った真意を聞かれ「ある日突然、知らない人から『あなたをお嫁さんに決めた』と言われたら、うれしいですか?」と例えた。結論の先送りについては「(小池氏側は)これまで随分データを取って詰めてきたでしょ。横浜は我々が出したものではなく(小池氏が)急に出してきた。IOCも『有明に造ったら』という考えだと思う。IOCも了承したことを勝手に変えるのは適切じゃない」と断じ、小池氏の四面楚歌(そか)が浮き彫りとなった。

 小池氏は会合後、自らが設置した都政改革本部の顧問と談笑するも、都職員とはほとんど接触しなかった。都は一枚岩ではなく、小池派の同本部と都職員とで意見が食い違う。都幹部ですら「先延ばし」を知らされておらず、職員は小池氏の「独断」に疲弊した。

 都の関係者は「小池さんになってから五輪関連が全く進まない」とこぼす。前日に有明の整備費を340億円まで削減できる案を示したが、小池氏が「404億円」と連呼したのにも首をかしげた。

 周辺用地が足りない横浜案では、警備などで公道や民有地を利用せざるを得ず、1カ月弱で市や民間の土地利用などの同意を得て大会運営計画を完璧なものにする必要があるが、関係者は「非現実的だ」と語る。

 ボートや水泳会場が従来案となり、ある大会関係者は「3敗と見られないよう、2敗1分けにしただけのよう」とばっさり。横浜案を詳細に詰められなかった場合「クリスマス決着」はただの“時間稼ぎ”とも取られかねず、今後の小池都政に影響を及ぼす可能性もある。【三須一紀】