東京・築地の中央卸売市場で5日、今年最初の取引となる「初競り」が実施された。注目のマグロでは、青森県大間産の212キロが7420万円の最高値で競り落とされた。ちょうど1年前は、昨年11月に豊洲新市場(江東区)に移転する予定だったため「築地最後」とうたわれたが、土壌汚染の懸念から、いまだに移転時期は決まっていない。築地の初競りは今年が最後なのだろうか?

 初競りでもっとも高い値のマグロは「一番マグロ」と呼ばれる。今年は7420万円で落札された。212キロのクロマグロで、1キロ当たり35万円。すしチェーン「すしざんまい」を運営する「つきじ喜代村」が6年連続で競り落とした。木村清社長(64)は「ちょっと高かったね」とこぼしたが「マグロでしか貢献できないけど、日本経済が元気になってほしい。お客さんに食べてもらって、おいしいと言ってもらえりゃ、私はそれでいい」と語った。

 この日、全国から築地に集結したマグロは計1238匹。仲卸関係者は「不漁年だったからマグロは少ない。200キロ前後は4匹ぐらい。その中でのあのマグロ。すごい」とうなった。

 7420万円は、記録のある99年以降、13年の1億5540万円に次ぐ史上2位の高値だ。通常なら1キロ当たり2万~3万円が通常のご祝儀相場。正月の風物詩とはいえ、「この高値がマグロの取引価格と勘違いされるのは困る。築地が目立つのはありがたいけど」と話す仲卸業者もいた。

 活気あふれる競りの中、今年こそ「最後の築地」の思いも交錯した。当初は昨年11月に豊洲に移転することになっており、1年前は「築地最後の初競り」と注目された。だが小池百合子都知事の就任後、豊洲新市場建設地の土壌の安全性に関する問題が次々に発覚。いまだ、はっきりした開場時期は決まっていない。

 豊洲に移転するリストに入っている市場関係者は「現状では豊洲移転すら白紙になる可能性だってある。移転するにしても早くても来春ぐらいじゃないか」と話した。喜代村の木村社長も「移転? 大丈夫なんですかね。食品を扱う市場なんだから、そんな簡単には決まらない。もしかすると、来年の初競りは、まだ築地かもしれないね」と話していた。【寺沢卓】