民進党代表選(9月1日投開票)に出馬した前原誠司氏(55)は23日、日刊スポーツなどのインタビューに応じ、代表選の位置づけを「立て直しのラストチャンスだ」と、強い危機感を示した。インタビューの主な一問一答えは次の通り。

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 -自分が代表なら、党をこう変えるというアピールポイントを教えてください

 前原氏 この政党は何を目指すのか。私は「All for All」と言っているが、まずはそれをしっかり位置づけることに尽きる。2点目は、その考えを党員・サポーター津々浦々まで皆が認識し、党はこんな社会を目指すと、一枚岩になって訴える。そんなきっかけにしたい。それを取りまとめる代表になりたい。多くの方の力を生かし、みんなをまとめてどう最大限引き出すかということに、腐心をしたい

 -小池都知事とは93年初当選同期。小池氏、小池都政への評価は

 前原氏 92年、日本新党の最初の参院選で、「近畿・四国遊説隊長」をやりました。あの時のスターは、細川(護熙)さんと小池さん。当時から、華のある方だった。それ以来、お付き合いしていただいている。国会議員のバッジを外し、ブームを起こして知事になられ、築地、東京五輪…。国民が分からなかった費用負担や盛り土の情報公開をして、説明責任を果たしている。だから都議選でも、あれだけの議席を獲得された。手腕には敬意を表したい。他方で、仮に(小池新党が)国政に出られるということなら、与党か野党か、我々の政策理念と共鳴できるかどうか、未知数だ。どんな理念、政策を出され、我々は共有できるのか。見極めさせていただきたい

 -枝野氏とはどんな交流を

 前原氏 夜は、数え切れないくらいご一緒しました。ほとんどが、カラオケボックス(笑い)。カラオケボックスで食事を頼み、食べている時から枝野さんが歌い出すこともある。この24年、いっしょに過ごしているが、9割9分の思い出がカラオケだ。枝野さんはコーラス部出身で、発声方法がまるで違う。ぼくは「昭和歌謡」でとどまっていますが、彼は私が知らない(最近の)歌手の歌も、フォローしている。その貪欲さは大したものだ。

 そろそろ帰ろうかという時、彼に歌ってほしい歌は、和田アキ子さんの「あの鐘を鳴らすのはあなた」。でも、今回の鐘を鳴らすのは私だ。私の持ち歌は、サザン、TUBE(チューブ)、チェッカーズ、沢田研二、郷ひろみ…古いでしょ(笑い)。石破(茂)さんと行くと、(石破氏は)キャンディーズやあべ静江さん。ぐっと時代がさかのぼる感じです

 -代表選は、盛り上がりに欠けているのでは

 前原氏 国民全体もそうかもしれないが、党員・サポーターの中でも欠けている。1年前に代表選をやったが、圧倒的な人気の中で蓮舫さんを選んだという図式がある。なんでまた代表選なんだ、というわだかまりが、党員・サポーターの中にもある。身内が盛り上がらないと、国民全体に注目されない。どう盛り上げていくか、候補者である私と枝野さんのアピール力が大事になる。頑張りたい

 -昨年代表選に出馬した前原さんにとって、今の状況は…

 前原氏 全く想像していなかった。今年の夏は、ノルウェー、モスクワに行く予定を立て、お金も振り込んでいたが、キャンセル料を10万円以上支払いました。ただ、民進党の立て直しができるかどうかのラストチャンスだと思う。この1年、全国を回ったが、地方議員の中には支持者の方から、「いつまで民進党にいるんだ」と言われている方が多い。それくらい、党への遠心力がはたらいている。その中で期待感を高めるのは難しいことだが、自民以外選択肢がない状況は、日本の不幸であるし、民主主義の危機。我々の使命だと思って、戦いたい。

 -趣味の野球でいうと、前原さんの打順は何番か

 前原氏 「ミンシンカチマス」という党の野球チームでやっているが、基本、私は試合には出ない。活躍の場をつくり、どう適材適所で働いてもらうか考えるのが役割だ。期待する人はたくさんいる。自民党よりはるかに粒ぞろいで精鋭だ。今は、枝野さんとの戦いが真剣勝負でどちらが勝つか分からないが、仮に、私が勝たせていただければ、おそらく人事で七転八倒すると思う。本当に悩むと思うが、全員野球で、みんなに出番、居場所を届けられるように頑張りたい

 -代表としての考えは、以前務めた12年前と変わったか

 前原氏 変化があった。あのころは、変に肩に力が入って、いちばん先頭に立つのが代表と思っていたが、今は1番後ろでいいと思っている。皆さんに前に出てもらい、活躍してもらう。党首討論などは先頭で戦います。12年経過して良い意味で気負いがない

 -安倍晋三首相について

 前原氏 森友、加計問題で内閣支持率は下がっているが、1度目は(途中辞任で)情けない終わり方をされて、もう2度とチャンスはないと思われた面もあると思う。でも、安倍さんを支えようという仲間がいた。私はアベノミクスを評価しない面の方が多いが、そんな準備をして、1度目の反省に基づいた人事もされた。その意味では、なかなか手ごわい。好敵手だと思っている。

 -枝野さんの評価は

 枝野氏 国会での質問力。国民が聞きたいことを聞き出す能力、緻密な頭脳、本会議場での理路整然とした演説。極めてレベルの高い政治家だ。オタクで、恐妻家であることも間違いない。個性豊かです

 -前原さんにとっての「オタク道」とは

 前原氏 連帯感、同じ趣味を持つ一体感がたまらない。年に1、2度、磐越西線などにSLの写真を撮りに行きますが、そこで政治のことで嫌な発言をされた思いは、1度もない。思想信条、政治信条を越えて友好関係がつくられ、何にも代え難い充足感を与えてくれる。趣味は、人生そのもの。私から鉄道を取ると、かなりの部分が欠ける。お互い、人生を削ってやっている「つながり感」はありますね。

 -プロレスもお好きですね。

 前原氏 高校、大学のころ大好きで、特に長州力が好きだった。長州力と藤波辰彌の試合も。それと、空中戦。初代タイガーマスクと、ダイナマイトキッズの試合も面白かった。ハルク・ホーガンやブルーザー・ブロディ、スタン・ハンセンも。得意技は、持っておいた方がいいですね。プロレスの醍醐味(だいごみ)は、互いの得意技を掛け合わせ、その延長線上でどちらが勝つか楽しみだった。長州力のラリアートがさく裂した後、サソリ固めでフォールを取った時、僕はガッツポーズでした。

 -前原さんの得意技は

 前原氏 外交・安全保障ですが、今は「生活保障」。最後に、フォールできる技を持っていたい

 -もし「枝野体制」になった場合、前原さんに考えが近い人と党を出るのではないかという見方もある

 前原氏 生意気な言い方かもしれませんが、戦っている時は負けることは考えていません。自分が勝つことしか考えていない。イメージというか、「念」が大事。負けることを考えていたら(勝負は)できない。