元秘書の男性に「ハゲー」などの暴言や暴行を加えたと週刊新潮で報じられ、自民党を離党した豊田真由子衆院議員(42)が無所属出馬の意向を示す埼玉4区は、これまでに与野党5人が出馬予定の混戦だ。豊田氏はおわび行脚を継続。自民党公認候補、穂坂泰氏(43)は党市議らとあいさつ回りをしている。民進党と日本維新の会の候補2人は、小池百合子代表(東京都知事)の希望の党との調整の行方がカギだが、希望の党が独自公認候補を擁立する可能性もある。共産党は護憲で対抗する。

 解散後初の日曜日。朝霞駅前の祭り会場に、白いパンツスーツ姿の豊田氏の姿があった。おわびを繰り返すが、子ども連れの女性や年配の女性らを中心に「頑張って」と声も掛けられ、表情は先月20日の謝罪会見より数段、明るい。周囲では自民党公認候補の擁立、小池新党立ち上げなど、大きな動きもあったが、「人さまのことを言える立場にない。まだ出るとも言っていません。今は1人でも多くの方に頭を下げたい」。脇目も振らず、謝罪を繰り返し、ビラを配った。

 先月24日に埼玉4区内の新聞朝刊折り込みで「おわび」ビラを配布。同23日から連日、4市の駅頭で頭を下げて配ったビラは数万枚に達したとみられる。ビラの表紙こそ「おわび」だが、中には2期4年10カ月の実績がびっしり。裏面では「安心・希望の活力ある国づくりに、引き続き、全力で取り組んでまいります」と決意表明している。

 「あなどれない」。豊田氏の動きを警戒するのは、自民党公認の穂坂氏陣営だ。4市長が選対幹部に就き、4市の党支部長も穂坂氏を支持。「引き締めの必要もないくらい危機感が高い」(陣営関係者)といい、「公認候補が出た今、豊田氏を推せる人はいない」との見方が大半だ。一方で「超人的」と言われた豊田氏の5年間のどぶ板ぶりは今も脅威だといい、自民支持者の“造反”や、今や絶大な知名度の豊田氏への浮動票の動きが「読めないところがある」(自民党市議)と警戒を緩めない。

 穂坂氏は「豊田さんには選挙応援を受けたこともあり残念だが、出馬される以上、私は責任政党の公認候補として、政策をしっかり訴える」と必死。自民市議らと共にあいさつ回りを続けている。【清水優】

 ◆衆院埼玉4区 埼玉県南東部の新座市、朝霞市、和光市、志木市の4市にまたがる選挙区。陸上自衛隊朝霞駐屯地がある。有権者数は新座(約13万6000人)朝霞(約11万2000人)和光(約6万6000人)志木(約6万4000人)。東京都板橋区、練馬区などに接し、都内への通勤者が多いベッドタウン。1996、00年は上田清司・現埼玉県知事が当選。上田氏が知事転身後、民主、自民、民主と当選者が変わったが、12年に豊田氏が初当選。14年も豊田氏が2選を果たしていた。