警視庁に昨年1年間に届けられた落とし物は約408万7千件。新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴って人流が回復し、落とし物の件数もコロナ禍前の水準に戻った。警視庁は今夏、いつでも受け取れるロッカーを全国の警察で初めて導入。落とし主の利便性向上や、返還対応をする職員の負担軽減を図る。

棚に並ぶスーツケースに、松葉づえやなぎなたまで-。5階建ての警視庁遺失物センター(東京都文京区)は常に約90万件の落とし物であふれている。駅や電車内で見つかった物は鉄道会社ごとに色分けされた袋に詰められていた。

地下には傘がぎっしり収められた台車がずらり。梅雨前の4月でも3万本弱に上る。荘司春海所長は「『一雨3千本』と言われ、梅雨時は6万~7万本くらいになる」と苦笑い。多くはビニール傘で、持ち主への返還率は1%台にとどまる。

警視庁が扱う落とし物は2019年の約415万2千件が過去最多。コロナ禍の20~21年は約280万件まで激減したが、22年から増加に転じ、23年は過去3番目の多さとなった。

ここ数年の内訳で最多は免許証やマイナンバーカードなどの「証明書類」で、IC乗車券を含む「有価証券類」が続く。近年はワイヤレスイヤホンや小型扇風機、加熱式たばこの普及で「電気製品類」の増加が目立つ。

落とし物は警察署などで一時保管後に遺失物センターに移る。窓口での返還は平日日中に限られ、持ち主が列を作ることも。会社員にとって利用しにくい現状もある。

そこで返還用のロッカーをセンター入り口付近に設置し、窓口が閉まる夜間や休日も受け取れるようにする。利用希望者はオンラインで事前に予約し、送られたQRコードと暗証番号を入力すれば扉が開く仕組みだ。

警視庁は効果を検証した上で警察署への導入拡大を検討。遺失届は22年からオンラインでも受け付けており、荘司所長は「警察署や交番に行かなくても自由なタイミングで提出できる。気軽に利用してほしい」と呼びかけている。(共同)