「やかましいなあ」。麻生太郎財務相は16日の参院予算委員会で、森友学園をめぐる財務省の文書改ざん問題で答弁中、やじを飛ばした野党議員をにらみつけた。安倍晋三首相は不在で、野党の追及はほぼ麻生氏に集中。改ざんの可能性を把握しながら公表しなかった経緯や、進退を繰り返し問われ、いら立ちを隠せなくなった。会見時の「上から目線」な態度もあいまって、批判が拡大している麻生氏。最初に問題を報じた朝日新聞の「取材力」を、認める場面もあった。

 麻生氏が、ヤジにキレた。参院予算委員会で民進党の白真勲氏が、真相解明が終わる前に、なぜ佐川宣寿前国税庁長官を辞めさせたのかと質問中、野党席から同様のヤジが飛んだ。麻生氏は急に答弁をやめ、「やかましいなあ」と、ドスの効いた声でひと言。野党席をじろりとにらみ、「聞きたい? 答弁。じゃあ静かにお願いします」と、不機嫌そうに話し始めた。

 与党の国会運営や財務省の対応を理由に、審議拒否していた野党が、約10日ぶりに復帰。この日は一般質疑で首相はおらず、森友関連質問や批判が財務相の麻生氏に集中。久しぶりの「環境の変化」もあってか、いらだちは隠せなかった。

 国土交通省から5日に官邸に改ざんの可能性が伝えられながら、情報開示されなかったこと、麻生氏の進退問題に野党の質問は集中した。財務省が改ざんの事実を認める方針を決めた翌日の11日、事実を知ったとする麻生氏は「(改ざんが)あり得るかもしれないと心配はするが、確認が取れなかった。途中経過を個別に聞くわけではない」と突っぱねた。また「辞めないのか」「責任を末端に押しつけ、トップの責任は」「民間企業なら辞める」と辞任要求の波状攻撃を受けると、大臣として対応策を取る必要性を強調した。

 「この段階で、辞めることを考えているわけではない」と述べた麻生氏に、「後では辞めるのか」と突っ込みが入ると、「仮定の質問の最たるものだ。辞めるつもりはないと、申し上げている」と、いつになく不機嫌そうに否定した。

 総理経験者で政権の重鎮。強気、こわもてな言動は麻生氏の持ち味のひとつでもあるが、森友問題では、記者会見で記者を皮肉ったり、謝罪の際に頭を下げなかった態度に「不遜」批判が拡大。大臣の資質も問われ始めている。この日、朝の閣議後会見から夜の衆院財務金融委員会までほぼ半日、答弁に追われた麻生氏。真相解明が進まない中、行われる19日の集中審議以降も日々、追及の嵐が待ち受けている。【中山知子】