12月に入ると街中はクリスマスムード一色となってきますが、アメリカでは半数以上の家庭で本物のもみの木をクリスマスツリーとして飾ります。そのため、11月下旬頃から市内のあちらこちらの空き地や駐車場に突如としてクリスマスツリーを売るファーム(農園)が出現します。

 この時期、そこで購入した大きなツリーを車の屋根にしばりつけて家路に就く人を見かけるのも風物詩となっています。大きな木にたくさんの飾りを飾って子どもたちはクリスマスを心待ちにします。

 農園には近隣の山で育てられたもみの木が運び込まれ、子どもの背丈程度の小さなものから大人の背丈よりも大きな2メートル級のものまで様々なサイズの木が並び、安いものは20ドル程度から購入できます。

 土地も家も広いアメリカでは、天井に届くほど高いツリーが人気で、男性の背丈くらいの大きな木が主流。50~70ドルが相場です。もみの木にも種類があり、濃い緑色のダグラスファー、平べったい葉っぱのホワイトファー、枝がツンツンとしていて葉が落ちにくいノーブルファーなどがポピュラー。もちろん、生の木なので1回こっきりしか使えません。

 生の木は鮮度が大切。だから、枝ぶりや木の状態などをチェックする姿はみんな真剣そのものです。より質のいい木を求めて遠くのもみの木畑に直接買いに行く人もいます。街中ではすでに切った状態で売られているに対し、畑では自分で好きな木を選んでその場で切ってもらうので鮮度が圧倒的に違うのだとか。

 生のもみの木は香がよく、見た目も美しいですが、意外にたくさんの水が必要で、毎日1リットル以上の水をあげないと、枝が枯れてボロボロと落ちて美しいツリーが台無しになってしまいます。クリスマスまで数週間、枯らさずにキレイに木を保つための努力も大切です。

 アメリカでは同僚や日頃お世話になっている人、友人などにクリスマスプレゼントを贈る習慣があり、もらったプレゼントはクリスマス当日まで開けずにツリーの下に置いて飾ります。日々増え続けるプレゼントの箱を眺めるのも楽しみのひとつなのです。

 子どものいる家庭では、クライマックスはもちろんサンタクロースからのプレゼント。日本では枕元に置きますが、こちらではクリスマスツリーの下に置きます。子どもたちは寝る前にサンタクロースのためにミルクとクッキーを用意して寝るのがお決まりで、朝起きるとミルクは空でクッキーにはかじった跡があり、ツリーの下にプレゼントを発見する、という流れになります。

 クリスマスが終わってからもしばらくツリーはそのまま飾っておきます。だいたいお正月が開けて1週間くらい経った頃から片付けが始まります。使い終わった木は、地域のリサイクル業者に回収されます。地域によって違いがありますが、家の外の道端に木を出しておくと勝手に回収してくれるところがほとんど。だから、1月に入ると道端に捨ててあるたくさんのツリーを目にしますが、いつの間にかなくなっていると言う不思議な光景を体験します。(ロサンゼルスから千歳香奈子、写真も)

金網に囲まれた農園は、木のいい香りが立ち込め、たくさんの種類の木が並んでいます
金網に囲まれた農園は、木のいい香りが立ち込め、たくさんの種類の木が並んでいます
ツリーを支える専門のスタンドに立てて家に飾ります
ツリーを支える専門のスタンドに立てて家に飾ります