今夏、映画「シン・ゴジラ」が大ヒットした。千葉・外房の深場釣りの入門編として、表情が似ているとして「海のゴジラ」ともささやかれるオニカサゴもジワジワと人気が出てきている。サオ先をかすかに揺らす小さなアタリから、大きな衝撃がサオを持つ手に伝わる。巻き上げる途中も強烈に暴れるのが魅力の1つだ。大原「力漁丸」(中井聡船長)から出漁した。

 大きくギョロンとした目、その2つの目玉の間には深いシワが刻まれる。そしてゴツゴツした岩肌のような顔面に、背中のキランととがったヒレ。日本最強の怪獣ゴジラを魚にデザインし直したら、こんな形になるんだろう。

 オニカサゴ。

 ヒレの先に毒素を含んでいて、間違って刺さってしまうと、患部がどす黒く変色して、大きくハレて、大の大人が泣いてしまうような痛さを伴うという。ただし、その毒素は熱に弱い神経毒で、ヒレを切断してあぶってしまうと、その毒は消えてなくなる。それどころか、そのあぶったヒレを日本酒の熱かんにひたすと、絶品のヒレ酒がいただける。

 刺し身や煮付けもおいしく、食味も外見のゴジラと同様に破壊力は満点だ。

 そこで、通年でオニカサゴを狙える力漁丸に乗り込んだ。

 港を出て約1時間。漁場に到着する。だが、すぐには「海のゴジラ」をターゲットにはしない。

 まず、エサを仕入れる。ムツバリに赤やピンクの飾りの付いたフラッシャー仕掛けを使う。

 不思議なことにエサもないのにサバが勝手に食らいついてくる。底に近い80~100メートルまで落として、ゆっくり上げてくる。サバの動きに負けないようにオモリは、オニカサゴと同じ200号を使用する。サオ先が激しく振動し、その7本バリすべてにヒットしてくる。

 この引っ捕らえたサバを3枚におろして、さらに縦に半分に切る。「長くビロンと」がベストのエサだ。オニカサゴは、サバの身には興味がないみたいで「なるべく皮だけの薄っぺらい七夕の短冊みたいにして」とは中井船長のアドバイスだ。

 このギョロ目、どうやらよく見えるようだ。大きくシャクって誘うと食らいついてくれない。オモリは、根掛かりしないように底からちょっと浮かせて待つ。反応がない場合は、10メートルほど巻き上げてから、再び落とすと、ガツンと食ってくる。頭上から落ちて来る「獲物」を狙いすまして、食いつく。あのギョロ目でしっかり見ているのだろう。

 浮きブクロがないため、巻き上げてくる途中でサオ先が激しく震えるぐらいに暴れる。そこが魅力でもある。

 乗船した当日は、終始、船中どこかでアタリが続き、外道でメダイ、ユメカサゴのグッドサイズも掛かってきた。タコボウズ記者も取材をしながら1匹をゲットした。

 夏は産卵期でもあるので、腹のぷっくりした重量感のあるオニカサゴが狙えますよ!【寺沢卓】

 ▼宿 大原「力漁丸」【電話】0470・62・0575。オニカサゴは午前3時半集合で、エサと氷が付いて1万2500円。要予約。