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松本杜氏に聞く「米」

其之弐 つくり手の顔が見える

 玉乃光で使用している酒米のほとんどは、契約栽培でつくられた「つくり手の顔が見える」酒米となっている。日本酒の品質の差は原料米の善し悪しで決定されるので、入荷する玄米には、米の品質に対して各生産者個人が責任を明らかにするため、玄米から白米にいたるまで  生産者の名前を付けて受払いしている。また、品種としては「雄町」(純米大吟醸用)をはじめとして「山田錦」「祝」「美山錦」等の酒米を使用している。

 では、玉乃光で使用するそれぞれの米の違いはどうだろうか? 例えば代表種の「雄町」と「山田錦」の差異を聞いた。松本杜氏は「雄町の方が心白が少し柔らかい。逆に山田錦の方が多少さばけがいい」と説明。「さばけ」とは米を蒸した後にヌカが手につかないような「手触りの良さ」の意味だそうで、米がネバネバせずある程度の固さが残るため心白が壊れずいい酒ができる。その上で「米の旨さは遜色ない。強いて言えば、雄町の方が甘い」と言う。確かに「雄町」の方が心白が大きく、「山田錦」の心拍はやや小さいのだが、中心部にそろっているのが特長だ。この心白が中心部にそろっていれば精米歩合を上げ、大吟醸もつくることができる。一方、「美山錦」は「雄町」や「山田錦」ほど大きく育たない。また「祝」は米が柔らかいのが特徴だと言う。また、「山田錦」のように精米で心白が壊れても、「蒸せばくっつく素晴らしい米もある」と杜氏は紹介してくれた。

酒蔵写真 米の味は生育環境に大きく左右される。具体的には天候や肥料設定などだ。「雨が多すぎると稲は固く、米はまずい」と杜氏が指摘するように、雨水に含まれる窒素成分が影響する。同様に肥料も窒素系は抑制して、好適米用の肥料を使うと言う。天候に関して注意することは「何より台風が気になる」と杜氏。特に雄町は160センチ以上に育つので(コシヒカリは120センチ)風雨でイネが倒れてしまう。また1994年は、冷夏で100年に1度と言われた不作となったため、季候すべてに気を使う必要がある。

 田植えが4月下旬から5月上旬に始まる一方、最後の刈り取りのタイミングは「本当に難しい」と杜氏。飯米とは異なる肥料計画をはじめ、栽培スケジュールが大切になってくる。育苗を30日程度(飯米は20日程度)行い、5月下旬に田植えを行う。その後は、鳥の被害や、害虫の繁殖を防ぐために月に1度の頻度で畔の草刈を行なう。また、夏場の日照時間をにらみながら、1日数回、水廻りを行い、株を太くするために、種もみを薄蒔きする。もちろん肥料の適量も環境に応じて変わってくるため「昨年の雨量から予測しながら行う」。赤子を育てるように気を遣いながら、10月の刈り取りを目指す。

 酒米の理想的な収量は 1反(1アール)6~7俵程度と言われる。「酒米は粒が大きいので、粒の大きさもさながら穂数が違う。概算で1穂に傾いて120~140粒前後が理想だ」と杜氏。「植え付けは少なく、稲の節からの枝分かれは多い生育を心掛ける」。それ以上実ると倒れてしまう。その微妙なさじ加減は長年の経験から来る勘が大きい。そして、同時に玉乃光酒造の蓄積して来た長年のデータが大きな力となる。

 良い酒米とは、砕けないで、正確に精米でき、日本酒づくりに不必要なタンパク質が少ない米だ。玉乃光では、この2点を、入荷する玄米全量にわたって分析し、その分析結果を酒米の生産者に知らせている。その分析結果を参考に、生産者が次の年の米づくりを行う。玉乃光ではそれらのデータを蓄積することで、どの地区の誰がつくった酒米が品質のよい酒米であるかを判定でき、将来の酒米の買い付けの資料としている。また、生産者がよりよい米づくりを行うことができるように、分析結果を基にした勉強会を開いている。一方、日本酒づくりの技術者も、田植えや収穫時期等には産地に出向き、酒米のでき具合の確認する。

 酒米の分析では、玄米については(1)入荷時の水分量(2)タンパク質の含有量(3)割れている米粒の量(4)米粒の重さを、白米については(1)精米中の割れた米粒の数(2)タンパク質の含有量等を調べている。その用途に合わせ品種改良が進められて来た。

 つくり手の勘と豊富なデータ。玉乃光の酒の旨さを生むのは、田植えから始まっていると言っても過言ではない。(続く)


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