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松本杜氏に聞く山廃

其之弐 即醸系はキレイ型、生もと系は濃醇型

 「即醸系はキレイ型、生もと系は濃醇型」。松本杜氏は2種類の「もと」から造られる、それぞれの味をこう表現した。火入れ前の状態は「ギラギラした感じやね。味が強すぎる」。

 ただでさえ熟成速度の速い純米酒だ。玉乃光酒造で行われる試飲会では社員、鑑定士や出入りの業者まで、火入れ前に利き酒を行い、出荷のピークを見定める。松本杜氏の言う「ギラギラ感」がその後の「山廃」を運命づける。「今でも、毎回ドキドキするね」。怖いもの知らずの杜氏でも息を飲む瞬間だ。

杜氏写真 山廃は「秋上がり」といって、夏をまたぎ貯蔵する。仕込みは4月、火入れの後、そこから4カ月寝かす。自然界の乳酸菌を操りながら、味を調える。調整は経験が頼りだが、できあがりのタイミングを見定めるのが難しい。その後、「旨みが出てきて、まろやかな味に変わる。まるで角が取れて丸くなる感じ」。「山廃」は熟成してから飲むので、味わいが複雑になる。重厚なコクと切れ味のよさがのどに響く。

 松本杜氏が駆け出しだった昭和25年、新旧の酒造りを知る蔵人が入り交じる端境期だった。文献によると、明治42年に「山卸」は廃止されている。しかし、「山廃」の意味を体で知るプロフェッショナルな蔵人と同じ空気の中で仕込みを学んだ経験は「宝」と、松本杜氏は振り返る。

 蔵では「酒屋唄」を歌った。

 はじまった鳥の一決~にっこり笑った男の子。

酒蔵写真  数え歌の1番、2番の歌詞だが、笑うのは女の子ではなく男の子。当時の酒蔵の「女人禁制」を反映して当時の一端が伺える。「3番と4番は忘れてしもうたけど、5番はごーんとなる秋の鐘やな」。

 「かき混ぜて、かき混ぜて、ただ麹と米が水に溶けるだけになると駄目。後で乳酸を添加すると、これはもう山廃仕込みではなくなる」。

ふつうの酛(速醸酛)のつくり方

昔の酛(生酛系)のつくり方

 全国の酒蔵に地域ごとの「酒屋唄」があった。単なる唄ではない。「当時は電子メーターやストップウオッチなどなかった。例えば朝、200リットル水を入れるとき、この歌だけが頼り。みんなで歌って、精度を高める。遊びではなく、真剣勝負で先輩蔵人から学んでいた」。

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