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松本杜氏に聞く山廃

其之壱 「山廃」とは何か

 杜氏写真 秋の夜長に独り「山廃」を飲む。ぬる燗で口いっぱい広がる複雑で奥深い味わい。酒が胸にゆっくり優しく染み入るような感覚になるのは何故か。そもそも「山廃」とは何か。「山廃仕込みは生涯のテーマ」という玉乃光酒造の松本喜四志(62=まつもと・きよし)杜氏に聞いた。

 「山廃」は「山卸廃止酛(もと)から造られるお酒」の略称だ。「山卸」とは米と水と麹を、蔵人が櫂棒ですり潰し、なじませる工程のこと。松本杜氏は蔵人として駆け出しの頃、「山卸」の技を学んだ。「大正時代の酒造りを知る先輩から、山卸の工程を聞いたよ。ずらりと数十個並べた半切桶に蒸し米・麹と仕込み水を入れ、数時間すると蒸し米と麹が水をすってふくれあがって山状に盛り上がる。これを蔵人2~3人掛りで酛(もと)摺り唄を歌いながら呼吸をあわせ、櫂棒で粥状になるまで摺りおろす。それも桶1個につき、一番擦り、2番摺り、3番摺りまで繰り返したと言うことだ。いい酒造りは山卸の量に比例すると考えられていた。ただし相当きつい作業だったと聞いているよ」。

酒蔵写真 「ただし、「山卸(作業)」は年号が昭和に入るころからあまり行なわれなくなったようだよ。明治末期に国立醸造試験場の研究で、「山卸(作業)」をしなくても麹の力により麹と蒸し米が仕込み水に溶け「酛(もと)」ができることが分かったからだ。これが「山卸廃止酛(もと)」だ。」

 「山卸廃止酛(もと)」の「酛(もと)」とは酒造りの基本となる「酒母」のこと。日本酒を仕込むのに欠かせないものとして、米、仕込み水そして酵母とあるが、そのうち酵母を純粋に育てたものを「酛(もと)」(=酒母)と呼ぶ。酵母を純粋培養して「酛(もと)」に育てるためには、雑菌のいない環境が必要となる。この環境作りに、「乳酸」が力を発揮する。

酒蔵写真 この「乳酸」の造り方に、蔵内の乳酸菌に乳酸を造らせる方法と、乳酸を直接投入する方法がある。 前者は生酛(きもと)と山卸廃止酛(もと)、後者は速醸酛(そくじょうもと)という。

 古来からの方法は生酛(きもと)で、山卸で粥状に溶けた麹と蒸し米は、その後、約1ヵ月かけて蔵内の乳酸菌を取り込みながら、アミノ酸たっぷりの生酛(または山卸廃止酛)に仕上がる。このアミノ酸が豊富な酛で仕込まれたお酒は、約20日間の醪(もろみ)工程を経て発酵が終り、酒米の特徴を生かした厚みのある香りと深く濃醇な味わいのお酒となる。

 後者の速醸酛(そくじょうもと)は、仕込み水に既成の「乳酸」を投入して環境を整え、ここに麹と蒸し米を合せてその後約2週間で「酛(もと)」を作る。一方、前者の生酛(または山卸廃止酛)は、蔵内に自然に住みついている乳酸菌が作り出す「乳酸」によって環境を整える。当然、手間暇もかかり、「もと」ができるまで約1カ月を要す。(続く)

ふつうの酛(速醸酛)のつくり方

昔の酛(生酛系)のつくり方


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