8月8日に終了した、全国高校ゴルフ選手権(山口・宇部72CC)の個人の部を取材してきた。私は高校女子が担当だった。結果は2日間36ホールで通算9アンダー135で回った新垣比菜(16=沖縄・興南高2年)が、初優勝した。前週まで女子ツアー初のアマチュアで3週連続トップ10入りの記録を打ち立てた新垣だから、この結果も当然と言えば当然ではあるが「高校タイトルを取りたい」と切望して、結果に結びつけるのだから、非凡なものを持っていることは間違いない。

 最近暑さにとみに弱くなった私にとって、うらやましくもあり、驚くのはその体力だった。新垣は7月12日に実家のある沖縄をたった。それから、約1カ月弱。毎週ゴルフをし続けてきた。今回の高校ゴルフが行われた山口県も連日、気温35度以上の猛暑だったが、新垣は最終日が終わり、インタビューしているときも、コップ1杯の水を飲んだだけで、涼しげな顔で質問に答えてくれていた。この16歳の体力、恐るべしだ。

 昨年4月に史上最年少でアマチュアの勝みなみ(鹿児島高2年)がツアー優勝した。その勝と新垣は同学年でライバルだ。いずれ、高校を卒業してプロの世界に入って互いにしのぎを削るのだろう。ツアー優勝を経験して、今年の日本アマにも勝った勝が、実績では1歩リードしているが、3週連続トップ10入りした新垣の安定感もかなりの実力だと見る。

 この高校ゴルフをテレビ東京が追いかけていた。その解説者の金谷多一郎プロが、新垣のプレーをじっくり見ていたので聞いてみた。

 結論から言うと、順調に育てば世界に通用するプレーヤーになる、ということだった。まず、スラリとした体形だ。身長は165センチある。現在16歳の女子だから、伸びてももう少しかもしれないが、日本の女子ゴルファーの中では長身なことがいいと金谷プロは言う。

 「概して、日本の女子ゴルファーは小柄で下半身が大きい土偶型が多い中で、新垣は異質の存在。身長が高いとスイングアークが大きくなる。加えて、昨年よりはるかにミート率が高くなっているからドライバーは飛ぶし、アイアンも正確に当たる。さらに今後、筋肉がついてきたらヘッドスピードは出てくる。今でも上半身と下半身のバランスはいいが、そのバランスもよくなる。こんなプレーヤーが世界基準なんですよ」。熱く語る金谷プロ。要するにベタぼめなのである。

 次に沖縄育ちを強調した。沖縄と言えば、宮里藍、宮里美香と米女子ツアーで活躍する2人を思い出す。彼女らは、どちらかといえば小柄であるが、小技が抜群にうまい。その理由は沖縄のコースだ。「下が岩盤で硬いから、ソールが厚いサンドウエッジばかりを使う今のジュニアゴルファーのアプローチでは硬い地面に、はじかれてしまうことがある。だから、自然に上げたり、転がしたりのアプローチを体で覚えるのが沖縄育ちです」。なるほど…。

 まだある。「本土のアマチュアのゴルフはよく6インチプレースをやるでしょう。沖縄には6インチプレースってないんですよ」と金谷プロ。えっ? 「芝がティフトンなので、ボールが本土の野芝じゃなくて沈むんです。だから、ボールを置き直しても同じだから6インチプレースなんてしないんです。わずかに沈んでいるボールをアイアンで正確に当てるためにも、しっかりとしたダウンブローのスイングが必要です。それも新垣には備わっている」と見ている。

 こんな大技、小技が備わった大型プレーヤー。おっさん記者は大きく世界に羽ばたいてくれたらいいなあと思っている。そんな中、ひとつ心配は、新垣があまりにも“いい子”過ぎることだ。「ナイスショット」と自分より後方の人から声がかかると、わざわざ振り向いて「ありがとうございます」と頭を下げる。こんなシーンに代表されるように、周りに配慮し過ぎている。アマチュアゴルファーだから、当然のマナーだと言う向きもあるだろうが、これから生き馬の目を抜くプロの世界に入ると、あまりに“いい子”であることは逆に損をすると思う。

 こんな心配をしてしまうのも、やっぱり“いい子”だからなのだが。プロになったら少し“悪い子”になってもいいと思っている。【町野直人】