今季終盤戦を迎えた国内男子ツアーには、次々と有力外国人選手がスポット参戦している。10月の日本オープン選手権には、世界ランク2位のアダム・スコット(34=オーストラリア)が出場。成績こそ振るわなかったが、連日多くのファンを引き連れてプレーし、4日間合計3万人に迫る集客に貢献した。

 今月20日開幕のダンロップ・フェニックスには、世界ランク14位のジョーダン・スピース(21=米国)が来る。今年のマスターズで優勝争いを演じ、ウッズを上回る最年少優勝かと話題になった、米ツアーの未来を担う逸材だ。そして今週の三井住友VISA太平洋マスターズでは、マスターズ覇者の世界ランク3位、バッバ・ワトソン(36=米国)がプレーする。

 個人的には、米ツアー取材の中で生で見て一番驚いた選手がB・ワトソンだ。あらためて言うまでもないが、まず飛距離が違う。昨季のドライバー平均飛距離、314・3ヤードでツアー1位。名実ともに、世界一の飛ばし屋だ。

 印象的だったのは、アーノルド・パーマー招待での光景。会場のベイヒルCは、池越えの左ドッグレッグホールが続く。各選手は飛距離が許す範囲で、ティーショットで正面より左を狙って池を越えていく。B・ワトソンは他の選手と比較にならないほど、左を向いて構える。そのラインで池を越えるのか! ただアドレスしただけで、地鳴りのような大歓声が起きた。

 そして飛距離以上に驚かされるのが球筋だ。ドライバーは高く大きな放物線を描くと思えば、超低空の打ち出しから、250ヤードを過ぎた先で急激にふけ上がる(ホップする)。左右へ曲げるショットも多用する。12年のマスターズ初勝利の際は、プレーオフで右の林の中から50ヤードほどもフックさせ、グリーンをとらえるスーパーショットで決着をつけた。

 マッチプレーでも対戦したことがある石川は「バッバは思いがけない方向に打ち出すので、僕らでもボールを見失うことがある」と証言する。ショットの曲げ幅があまりにも大きいので、打ち出しはホール外のギャラリーの上空になることもある。「あぶない、こっちに飛んできたぞ」と観客が頭を手でかばった瞬間、上空のボールはホール中央に向かって急激に曲がる。そしてピンに吸い寄せられるように、グリーンをとらえる。観客のあっけにとられた様子を、米ツアー会場では何度もみた。

 変幻自在の球筋の本当のすごさは、会場に行かないと分からない。直線的な球筋でシンプルに攻めるスコットよりも、生で見た時の驚きは数倍だと思う。開幕前日のプロアマ戦では18番パー5(520ヤード)で、なんと9番アイアンで2オンに成功する場面もあった。予選同組に入る、アイアン精度は米ツアーでもトップクラスの石川と、日本一のパター名手谷原が、まったく違うスタイルでどうB・ワトソンと戦うかも注目。ファンのみなさんには、可能であればぜひ現地で観戦してほしいと思う。【塩畑大輔】