被災者から勇気をもらった!

 石川遼(19=パナソニック)が2日、東日本大震災の避難所となっている埼玉・三郷市の瑞沼市民センターを慰問。イソップ童話の朗読や、ゴルフゲームなどで、子どもたちを喜ばせた。今季の賞金全額を義援金として寄付することを決めるなど、被災者の支援を人一倍考えてきた。開幕から3試合は優勝に手が届かなかったが、逆に避難者から「ゴルフ頑張って」と激励され、あらためて東北にささげる勝利を心に誓った。

 突然の「遼くん」の訪問決定に、避難所はにわかに活気づいた。2日午後。石川来訪を知った福島県民たちは、そわそわと出迎えの準備を始めた。ある女性は「昼寝をしていたら、強い化粧のにおいで目覚めた。そしたら若いお母さんたちが、みんな化粧していた」。おばあさんは「じいさんが久々に背広を着るって言い出した」と笑った。

 午後3時。石川が姿を現した。まずは童話5冊を、子どもたちに読み聞かせ。さらにテレビの前でおもちゃのクラブを振って遊ぶ、シミュレーター型ゲームで、子どもたちと対戦した。大人の住民とも将棋大会を行い、交流会は大盛り上がりになった。

 「最初は緊張しました。避難所におじゃまするのは、自分の家に突然上がられるようなもの。足を踏み入れていいかも迷った」。だが避難所の様子は、石川の想像と違っていた。「思っていたより、何十倍も元気があった。『ゴルフ頑張ってね』と言ってもらったくらい。逆に元気をもらえました」とうなずいた。

 避難所の人々はもちろん「遼くんが来たから元気になれた」と言う。だが石川にとっても新たなモチベーションを得る場になった。

 石川

 これからは今まで以上に、ゴルフであきらめないということにこだわる。決してあきらめないプレーを極めていきたい。

 震災当時は、4月の大一番マスターズに向け、米国で調整していた。「自分も何かしなければ」と考えながらも、帰国できないもどかしさもあって、被災地に対する思いはいっそう強まった。今季賞金全額などを、義援金にする決断をしたのも、そのためだった。

 さらに「被災者の方に喜んでもらえるゴルフを」と例年以上に攻めのゴルフに徹してきた。ここまでは、その姿勢があだとなる場面もあり、優勝を逃してきた。1日の中日クラウンズ最終日でも、嵐の中でバーディーを狙い続けたことで、ダブルボギーをたたいた。

 試合後には「時にはボギーを覚悟する選択も必要かも」と肩を落とした。だが慰問を終えた石川は「自分はゴルファー。被災者の方には、やはりプレーで喜んでもらうのが一番」とあらためて「魅せるプレー」を誓った。バーディーを重ね優勝すれば、おのずと東北に送られる義援金の額も増える。最後まであきらめないアグレッシブなゴルフで、石川が東北にエールを送り続ける。【塩畑大輔】