上田桃子(30=かんぽ生命)が、3年ぶりツアー優勝を飾った。不振のパットを次々と決め、8バーディー、1ボギーの7アンダー65。通算16アンダーの200で混戦を制した。国内優勝は14年11月の樋口久子・森永レディース以来で通算12勝目。今季未勝利なら引退を決めていたことを会見で明かし、復活Vに涙を流した。2打差の2位はテレサ・ルー(29)。

 やっと苦しみから解放された。前夜、上田はほとんど眠れなかった。真夜中に起きては不振のパターを握る。鏡の前に立ち、何度も素振りをした。昨年12月に他界した荒川博さん(享年86)の姿が浮かんでは消える。元プロ野球巨人打撃コーチで、王貞治氏に「1本足打法」を教えた荒川さんからはゴルフの指導を受けていた。恩人の日記に「よく練習をしている」と記された上田だが「やっても、やっても強くなれなかった」。気が済むまでパターを振り続けると、朝になっていた。

 覚悟を決めて臨んだ最終日は2位からのスタート。1番から3連続で2メートルのパットを沈め、次々とバーディーを奪う。16番でティーショットが岩を直撃しても、18番で池に落としそうになっても、真夜中にイメージしたパットが救ってくれた。1カ月前に故郷熊本であったKKT杯バンテリン・レディースでは、プレーオフでV逸し涙に暮れた。14年11月以来の復活優勝。これまでの苦労が走馬灯のようにめぐり、会見では感極まって泣いた。

 「ずっと(優勝が)近くて遠かった。極め付きは熊本で勝てなかったこと。あのダメージは大きかった。今年勝てなければ、ゴルフはやめようと思っていました。ケジメをつけないといけないから、周囲の人たちに伝えていました」

 熊本で敗れてからは、体調不良で点滴を打ち続けた。気管支ぜんそくでせきが止まらず、救急車を呼ぶ騒動にもなった。「今年1年終わってから、どうなるかは分からない。でも、また頑張れると思える日になりました」。通算12勝目。強い上田がよみがえった。【益子浩一】