<男子ゴルフ:日本プロ選手権>◇初日◇15日◇群馬・レーサムゴルフ&スパリゾート(7127ヤード、パー72)◇賞金総額1億3000万円(優勝2600万円)

 史上最年少出場の石川遼(16=パナソニック)が、自己修正能力を発揮して、1オーバーの54位で発進した。4番でダブルボギーをたたくなど、15ホール目の6番までに3オーバーと崩れかけたが、右手首を固定させる素振りを繰り返して、本来の豪快なショットが復活。上がり2ホールを連続バーディーで締めくくり、予選突破圏内に急浮上した。地元群馬出身の武藤俊憲(30)が8アンダーで、単独首位に立った。

 よみがえった遼クンが、誇らしげにパターを突き上げた。9番グリーンを取り囲む大ギャラリーの視線を楽しむように、手前4メートルのバーディーパットを迷わず決めた。「プロゴルファー日本一」を争う大舞台の終盤に、きっちり見せ場をつくった。残り2ホールで、100位台から54位にジャンプアップ。「すっきりしています。8、9番と思い描いた通りにバーディーが取れた。何とか踏みとどまった感じですね」。苦しんだ1日を笑顔で締めた。

 約2週間ぶりの実戦ラウンド、ここ数日とは一変し急上昇した気温からか、体の切れはいまひとつだった。疲れも出た後半は、飛距離、正確性とも失われた。第1打がラフに捕まった4番で、2段グリーンの下から3パットしてダブルボギー。6番では右ラフからの第2打を目の前の木に当てて、ボギーをたたいた。

 並みの選手なら一気に自滅する展開。だが、16歳プロは冷静だった。手の甲を交差させたり、野球のバットのように両手を縦に並べたりしながら、何度も素振りを繰り返した。「不安定だった右の手首を固定するためです。トップの位置から同じ形で振り下ろせれば、どんなに思い切り振ってもボールは曲がらないから」。父との練習で築き上げたスイングの型を再確認すると、ショットに本来の躍動感が戻り、連続バーディーにつながった。

 プロ初体験のメジャーを1オーバーで乗り切った。しかし、これで満足する男ではない。「まだまだ修正できるまで、時間がかかってしまう。これが現時点での実力なのかな」と淡々と話した。この日のティーショットとアプローチは、開幕戦当時の輝きを見せていた。「昨日の時点より、つかめてきた。明日も右の手首に注意すれば、きっといいスコアが出ると思う」。新たな自信を胸に、初のメジャー予選突破へ2日目に挑む。【大石健司】