上田桃子(22=ソニー)が、記者会見中に左手中指から流血する大トラブルで、国内ツアー復帰第3戦ヨネックスレディス(29日開幕)への出場が、微妙になった。新潟・ヨネックスCCで27日、自身のバーディー数に応じて(財)日本盲導犬協会に基金を積み立てる「桃犬(ももけん)プロジェクト」の中間報告会を開催。ところが、その写真撮影中、PR犬の革製リード(引き綱)がツメに引っかかって折れ、出血。今週はもちろん、今季後半戦のプレーにも支障の出かねない非常事態に陥った。

 上田が、自身の慈善活動の会見で、不運な「事故」に襲われた。盲導犬協会のPR犬ヴィンス(オス=2)が、ツーショット撮影中に突然、暴走。上田が慌てて伸ばした左手の先がリードに引っかかる。次の瞬間「あっ!!」と叫び声を上げてうずくまった。ピンクの付けヅメと一緒に、中指のツメの3分の1が、折れていた。みるみる指は、真っ赤な血に染まった。

 上田は目に涙を浮かべ、無言でクラブハウスに引き揚げた。会見は中止となり、玄関で待ち受ける報道陣を避け、裏口から長岡市内の病院へ向かった。ゴルファーにとって左手中指は、構えた時に右手の下になる重要な指。上田が、28日のプロアマ戦と29日からの本戦への出場を強く希望したこともあり、病院での治療は4時間にも及んだ。結局、出場の判断は28日朝に持ち越しとなった。

 この日は、晴れがましい報告の舞台だった。上田と協賛5社を合わせて、1バーディーあたり3万円が、盲導犬育成の支援に充てられる活動が、先週700万円を突破した。だが、会見の絵づくりに仙台の訓練センターからやってきた若い2頭のPR犬は最初から、慣れないゴルフ場で約30人の報道陣に戸惑っていた。事故の直前には、上田のドライバーショットを背後で見ていたが、金属音にメスのココ(2)はおびえてしまい上田に近づかず、当初予定されていた3ショット撮影ができなかった。

 不測の事態に、盲導犬協会は平謝りだ。血統的に選ばれた犬(ラブラドルレトリバー)でも、厳格な適性検査を経て、盲導犬になれるのは10頭中3、4頭。「今回の2頭は、注意力不足などで(盲導犬に)なれなかった犬」と同協会普及啓発部の目黒隆之マネジャー(53)。撮影中ヴィンスは目黒氏をずっと見ていたが、カメラマンの注文に応えて視線を動かそうと、目黒氏が移動。その瞬間「私が視野から消えたので、心配して飛び出してしまったんです」(目黒氏)という。

 9月のメジャー2戦、連覇のかかる11月のミズノクラシックと試合は続く。「とても残念でなりません。1日も早くケガを治し、1つでも多くのバーディーを取れるよう頑張ります」と気丈にコメントを残したが、楽観できる状況ではない。