<男子ゴルフ:日本オープン>◇最終日◇19日◇福岡・古賀GC(6797ヤード、パー71)◇賞金総額2億円(優勝4000万円)

 片山晋呉(35)は本大会3年ぶり2度目の優勝で、ツアー通算25勝とし、史上7人目の永久シードを獲得。賞金ランクでも1位に返り咲いた。

 技と精神力を凝縮させたスーパーショットだった。16番パー5、第1打を左林に曲げ、片山は残った114ヤードの第4打をカップ左10センチにぴたりと止めた。「今までやってきたこと、いろんな重みが生ませてくれた1打」。勝負を決めた。

 5月の日本プロで24勝目を挙げ、その後11戦足踏みした。「25という数字にうなされていた」。この日も1番でボギー、2番は4メートルを沈めてやっとパーと苦しんだ。1組前の石川の進撃に気を取られながら、己を奮い立たせた。

 「日本オープンは経験、プライド、技術、いろんなものがかみ合ってこそ勝てる試合。石川クンは将来絶対取る選手だと思うけど、まだ僕が取らせない。まだまだ負けない」。ドライバーを振り続ける17歳に対し、ドライバーをバッグから外して難コースを攻略した。4日間のフェアウエーキープ率は67・86%で1位。ただ1人アンダーパーで72ホールを戦い終えた。

 10年前、日記に「35歳で25勝」と書いた。机の引き出しからそのノートを取り出し、先週から持参。「悔しい思いがたくさん書いてあった」。プロ転向後4戦連続予選落ち、日大同期の横尾がシード入りした96年は獲得賞金0円だった…。屈辱を味わいながら、夢を描いていた自分を思い出した。「遼クンのように生き生きとしていた。そういうことを振り返れたのは大きい」。忘れかけていたゴルフへの新鮮な思いを、大一番にぶつけた。

 青木、尾崎将、中嶋の「AON」は180センチを超える体格を誇るが、片山は171センチ。体格がない分、頭を使った。「平均的な日本人の僕がやれてるのは人にない探求心があるから」。パワーの必要なロングアイアンに替えて、7番、9番といったショートウッドを操った先駆者。最近は脳を活性化するために、逆さにしたスコアカードに左手で数字を記入する。歯磨きも左手だ。体のハンディを補う研究熱心さで、勝利を積み上げてきた。

 日本プロと日本オープンの同一年制覇、9年連続の1億円超えで、賞金ランク1位も奪回した。「次ですか?

 シンゴの45勝をできたら本望でしょう」。節目の勝利も、片山にとっては通過点だ。【木村有三】