<米男子ゴルフ:全英オープン>◇最終日◇19日◇英・ターンベリー(7204ヤード、パー70)

 193センチの男が、さらに高々と両腕を突き上げた。スチュワート・シンク(36=米国)が、望み続けたメジャーの栄冠を、50度目の挑戦でついに射止めた。「誇りに思うよ」。連日の優勝争いから1歩後ろで我慢を続けた。1アンダーの6位から出た最終日は17番までパープレー。「以前だったら神経質になっていた状況でも冷静だった。ずっと穏やかにプレーできたんだ」。

 そして、巡ってきたチャンスをものにした。最終18番で4メートルのバーディーパットを放り込む。もつれこんだプレーオフの相手は尊敬するワトソンだった。「子供のころにテレビで見てあこがれた選手。その人と競うなんて超現実的な経験だった」。59歳への声援が圧倒的に多かったが、自分のゴルフに集中した。崩れ落ちる相手を尻目に2バーディーを奪って圧倒。「みんなワトソンを応援していたけど、少しは僕に振り返ってくれるかな」。

 幼いころ、両親がプレーする間、練習場で待たされてゴルフを始めた。2学年下のウッズ相手にもひるまず“タイガーキラー”と呼ばれた大学時代に結婚し、子供も生まれた。95年のプロ転向後も順調に実績を重ねたが、メジャーでは過去3位が3度。01年全米オープンでは最終ホールで50センチを外し、プレーオフに残れなかった。米ツアー6勝目が、待望のタイトル。「これで前へ進める。新しい章の始まりだ」。今大会前はアイルランドに渡り、強風下でプレーをこなしリンクスに備えた。努力と準備を惜しまない大男が、愛する家族が見守る前で、伝統のトロフィー「クラレットジャグ」を堂々と掲げた。