<女子ゴルフ:LPGAツアー選手権リコー杯>◇最終日◇29日◇宮崎・宮崎CC(6508ヤード、パー72)◇賞金総額1億円(優勝2500万円)

 横峯さくら(23=エプソン)が、史上最大の逆転劇で初の賞金女王に輝いた。5打差5位から後半の14番でチップイン、15番はバンカーの土手に跳ねる幸運で連続バーディーを奪い69。通算6アンダーで競技を終えた。すると首位スタートの飯島茜(26)が16番から連続ボギーと失速し75、ランク1位だった諸見里しのぶ(23)も71と伸び悩んで2位に終わり、横峯が優勝&女王の座をつかんだ。9月には諸見里に約4400万円の大差をつけられたが、その後3勝し大逆転。獲得賞金も1億7500万円を超え史上最高となった。

 プレーオフに備え、練習グリーンにいた横峯が突然しゃがみこんだ。「YOU

 WIN ! 」。キャディーのジョン・ベネット氏(37)に告げられ、一瞬浮かんだ笑みが涙に変わる。1年間支えてくれた相棒の胸に顔をうずめ、号泣した。

 横峯

 本当に信じられない。女王になった実感はないけど、本当にうれしい。4日間苦しかったけど、みなさんの声援のおかげで勝てました。感謝してます。

 奇跡のラストスパートだった。11、13番のパー5でバーディーを逃し、その時点で首位飯島と3打差。賞金1位諸見里と同じ通算4アンダー。最低でも諸見里を上回らないと女王はない-。ベネット氏と一緒に必死に気持ちを落ち着けた。「終わったことは仕方ない。次に集中しよう」。

 14番パー4だ。残り20ヤードのアプローチが強めに転がる。横峯が「ステイ(止まれ) ! 」と叫ぶと、球はカップに吸い込まれた。幸運は続く。15番パー4は8番アイアンの第2打がグリーン手前バンカーの土手をギリギリ越えた。何と前方に跳ねた。ラインに乗ってカップの縁に止まった。「神がかってないとできない。自分の実力だけじゃないですね」と本人も驚く連続バーディーだ。最終18番は2メートルを沈めるパーで通算6アンダーでホールアウトした。すると、後続の選手が崩れた。飯島は16番から連続ボギー、粘る諸見里も自分に1打届かなかった。

 9月日本女子プロ終了時、諸見里との賞金差は約4400万円もあった。史上最大の逆転劇。ニュージーランド人のベネット氏のおかげだ。今季全33試合のバッグを託し、参院議員となった父良郎氏の代わりにスイングチェックも頼んだ。くじけそうになると「今年のテーマは我慢。我慢していこう」と背中を押してくれた。前日の3日目終了後、パット時に手首が折れることを指摘され、この日は握り方を修正。終盤3ホールでパーパットをしっかり決めた横峯は「キャディーとしても最高だし、コーチもしてもらえる。本当に頼りになる」と感謝した。

 管理栄養士を雇い、玄米や野菜中心の食生活を始めて4年。多くの女子プロは仲間で夕食をともにしているが、横峯はいつもマイ・キッチンカーでマネジャーらと食事する。「1人じゃないし、ストレスなんてない。試合にも集中できる」。趣味もカラオケや映画を見る程度だ。自宅に室内練習場を作り、生活のすべてをゴルフに注ぎ、晩秋に咲いた、大輪のさくら。いちずな情熱に、宮崎の女神がほほ笑んだ。【木村有三】