<男子ゴルフ:ダイヤモンド杯>◇最終日◇29日◇千葉CC梅郷C(7108ヤード、パー72)◇賞金総額1億2000万円(優勝2400万円)

 小田孔明(32=フリー)が1イーグル、4バーディー、4ボギーの70で回り、通算16アンダー272で今季初優勝を飾った。首位で迎えた最終日は14番のチップインイーグルで後続を突き放し、ツアー通算5勝目を引き寄せた。09年賞金ランク3位も、昨年はイップスに苦しみ、30センチのパットが入らなくなった。予選落ち続きの中、座禅修行で精神面を強化。今季の復活につなげた。プロ10年目の河瀬賢史(31)が通算10アンダーで4位。池田勇太(25)は通算6オーバーの61位に終わった。

 何があっても動じない。3打差首位で迎えた最終日は豪雨の悪条件。小田孔は9、10番の連続ボギーで、2位藤田に1打差に迫られた。過去の優勝争いでは負け続け、苦手意識のある相手。それでも「藤田さんに勝つ。自分が伸ばせば、後ろは追いつかない」と攻めの姿勢を貫く。14番パー5ではグリーン前ラフの残り40ヤードからチップインイーグルを奪取。藤田を6打差と突き放し、優勝を手中にした。

 09年賞金ランク3位。賞金王を狙った昨季は4月の開幕戦東建ホームメイト杯こそ連覇も、5月にパットイップスが発症。「お先の20センチを外したら急にきた」と2、3メートルではなく、30センチのパットが入らなくなった。池田らパットの名手たちに克服法を聞き回ったが、答えは見つからない。10月までの約5カ月間で14戦中9度予選落ち。祈るような思いで、神戸市内の寺に駆け込んだ。

 神戸市灘区の一王山十善寺には、知人で下部のチャレンジツアー出場経験もある尾山宜道住職(52)がいた。目を開けたままの座禅修行も特徴で、暗闇の中、ろうそくの炎だけをずっと見つめて集中力を強化。尾山住職からは「直心是道場」との言葉をもらった。素直な心の大切さと「たとえカップに入らなくても、真っすぐな球を真っすぐな回転で打つ。それがナイスパット」と説教された。心のもやは晴れ、イップスの症状は消えた。

 今季は3連覇の懸かった開幕戦で予選落ちした。スランプ脱出で自信があっただけにショックは大きかった。再びすがるように同寺で座禅修行。するとまた上昇気流に乗り、とんとん拍子に今季初優勝まで実現した。「僕のパワースポットなんです」と笑顔で感謝した。

 昨季は開幕戦優勝で賞金王宣言したが、イップスが待っていた。「あまり出しゃばると、いろんな人に“賞金王を取れないじゃないか”と怒られるんで、今年はしれーっといきますよ」と話す。イップスを克服した「不動心」を貫けば、初の賞金王は自然と近づく。【田口潤】