<男子ゴルフ:長嶋茂雄招待セガサミー杯>◇2日目◇22日◇北海道・ザ・ノースカントリーGC(7115ヤード、パー72)◇賞金総額1億3000万円(優勝2600万円)

 「元天才少年」の市原弘大(29=フリー)が8バーディー、3ボギー、ベストスコアの67で回り、通算9アンダー135、首位と1打差の2位に浮上した。18歳でプロ転向した逸材はイップスと腰のヘルニアに苦しんだが、下部、アジアツアーで結果を残し低迷を脱出。悲願のツアー初優勝が手の届く位置につけた。

 スポットライトを浴びるのは初めてだった。市原は7メートル以上のバーディーパットを3回ねじ込むなど、ベストスコア67を出し、首位と1打差の2位。会見場に呼ばれると「初めてだな」と戸惑いながら晴れの席についた。

 18歳だった01年4月、ジュニアタイトル25個を引っ提げてプロ転向。だが、19歳でパターイップスを発症。ショットにも影響し「パー3でも隣のホールに飛ぶ」ほどの重症に陥った。「金も底をつき、何度もやめようと思った」。ミニツアーのわずかな賞金で食いつなぎ、イップスを克服したが、今度はケガに泣く。

 23歳だった05年9月、腰椎ヘルニアが発症。1年間はクラブを握れないどころか、寝たきりの状態が続いた。それでも、重度のイップスを乗り越えただけに「けがは治る」と焦りを抑えて治療に専念。賞金ゼロの時代も、海外進出の夢を捨てず、実家の援助などで苦境を乗り切った。

 26歳だった08年にアジアツアーへ本格参戦。下部ツアーでも結果を残した。今季はアジア、日本両ツアーのシード権を得た。現在2戦連続10位。結果を気にせず、プレーに集中できることが好結果につながる。10年の苦闘を乗り越えた「元天才少年」は「ゆくゆくは米、欧州ツアーでプレーしたい」。捨てなかった夢のためにも、まずは国内初優勝をつかむ。【田口潤】