<男子ゴルフ:つるやオープン>◇第1日◇25日◇兵庫・山の原GC山の原C(6793ヤード、パー71)◇賞金総額1億2000万円(優勝2400万円)

 66歳の尾崎将司(マックス・インターナショナル)が9アンダーの62で回り、年齢以下のスコアを出すエージシュートを達成した。日本のレギュラーツアーでは史上初の快挙。17番パー5では全盛時を思わせるイーグルをはじめ、9バーディー、2ボギーの62の大会レコードタイで単独首位に立った。「俺はエージシュートを目的にしていない。あくまでも優勝だ」。11年ぶりVを豪語するジャンボ尾崎の「新伝説」の始まりだ。

 強い尾崎将のすべてが出たのは17番パー5(510ヤード)だった。約300ヤードのドライバーショットで右フェアウエーをキープする。ピンまで残り217ヤード。ショットの前に右手1本でブン、ブンと素振りをする。今季からの“儀式”だ。「右手にパワーが出て、こうやると大きく振れるんだ。痛い左腰も回るようになる」。ロフト22度のユーティリティーを振り抜くと、ピン奥7メートルに2オンした。

 午後スタートの尾崎将がスコアを上げていくにつれてギャラリーが増える。17番、7メートルのイーグルパット。「見てろよ」とばかりに、簡単にねじ込んだ。手にした中尺パターを刀にしてさやに収めるポーズ、右手をコブラのようにしたガッツポーズ。ギャラリーは全盛時を思い出した。

 「入ると思ったろう。俺も」とジャンボ節も復活だ。代名詞の“コブラポーズ”には「昔ならどこで出そうかと計算したけど、きょうは自然に出たね」。イーグルで一時は10アンダーまで伸びたスコアに興奮気味だ。「イーグルはよ。ドライバー、セカンド、パットと3つそろわないと出ないんだ」とドヤ顔で解説した。ツアー最多の94勝を誇る男の技術もパフォーマンスも全盛時に戻っていた。

 18番のグリーンに上がってくる。大拍手に右手でサンバイザーのひさしを持って会釈する。この快感はいつ以来だろうか。最終ホールはこの日、2つ目のボギーとしたが、1イーグル、9バーディーのコース記録に並ぶ62。66歳の尾崎将が、年齢以下のスコアで回るエージシュートをスコア4つも余して、日本のレギュラーツアー史上初の快挙を達成した。「アイアンさえ良ければ、すごいスコアが出る予感があった」と振り返った。

 第一線のレギュラーツアーにこだわって戦う。プロ44年目。男子ゴルフ界の第一人者も2011年の「ブリヂストンオープン」で予選通過を果たして以来、先週の開幕戦まで27試合予選通過がない。10年以上も腰痛に悩まされ、いつしか予選落ちしても、棄権してもニュースにならないようになってきた。

 「俺だって1人でベッドで泣いた日もある」。昨年12月からドライバーを1インチ長くして、今季に備えた。「長くすれば飛距離は伸びる。若いやつと戦える。でもミート率は悪くなる。ゆっくり大きく振ればいいんだ」と練習ではさらに1インチ長いドライバーで研さんした。

 わずか3センチに満たない創意工夫が新ジャンボを雄々しく飛び立たせた。「明日から?

 やるのは今でしょ」とジャンボスマイルで締めくくった。勝てば、とんでもない最年長記録の誕生だ。【町野直人】

 ◆尾崎将司(おざき・まさし)1947年(昭22)1月24日、徳島県生まれ。海南高で投手として活躍。1964年の選抜高校野球で初出場初優勝。翌年プロ野球西鉄に入団。67年の退団後、ゴルフに転向。70年プロテスト合格。71年に日本プロ選手権で初優勝すると、以来ツアー94勝を含む通算113勝。国内メジャー20勝、賞金王12回は歴代1位。2010年に世界ゴルフ殿堂入り。181センチ、90キロ。血液型B。

 ◆エージシュート

 年齢以下のスコアで回ることで、66歳91日の尾崎将司の「62」は、1973年(昭48)ツアー施行後、日本レギュラーツアー史上初。

 ◆「62」ストローク

 02年の「日本シリーズ」(東京よみうり、パー70)第1日以来。

 ◆第1日トップ

 04年「マンダムルシードよみうりオープン」以来9年ぶり。

 ◆予選通過すれば

 11年ブリヂストン・オープン以来、尾崎将が出場した試合で28試合ぶり。日本ツアーの最年長予選通過は06年の杉原輝雄の68歳311日。尾崎将が果たせば、歴代2位の66歳92日になる。

 ◆主なエージシュート

 青木功は07年日本シニアオープン選手権最終日に65歳で65、08年鬼ノ城シニアオープン最終日に66歳で66、10年ザ・レジェンド・チャリティープロアマで67歳で66と、大会でのエージシュートを3回記録。杉原輝雄は71歳で出場した08年の関西プロゴールドシニアで、70、65と2日連続で達成し優勝するなど、多数記録した。中村寅吉は65歳の81年関東プロシニアで「65」を出した。米ツアーでは79年、クアッド・シティーズ・オープン第2日にサム・スニード(米国)が67歳で67を記録し、最終日も66をマークしたのが初。01年にはアーノルド・パーマーが71歳で「71」を出したが、予選落ちしている。