<男子ゴルフ:ダンロップ・スリクソン福島オープン>◇第1日◇7月31日◇福島・グランディ那須白河GC(6961ヤード、パー72)◇賞金総額5000万円(優勝賞金1000万円)

 繰り上がり出場の高橋竜彦(40=フリー)が6バーディー、1ボギーの67をマークし、首位と3打差の4位と好発進した。当日午前10時30分に、星野英正の体調不良による欠場で出場機会がめぐってきた。キャディーも務めるプロゴルファーの牛渡(うしわた)葉月夫人(41)が福島県南相馬市出身。震災からの復興を目指す“第2の故郷”をもり立てるべく、16年ぶりのツアー戦福島開催で快進撃をみせた。

 最後まで、天が味方し続けた。最終9番パー4。高橋は8メートルのパットをねじ込み、6つ目のバーディーを挙げた。「同組の松村がほぼ同じ場所から先にパットを打って、ラインをみせてくれた。ラッキーでした」。グリーンを笑顔で下りると旧知の関係者に取り囲まれ、健闘をたたえられた。

 前日まで出場選手一覧に高橋の名前はなかった。少ない可能性に懸け、午前5時30分に会場入り。繰り上がり出場を待った。「正直出られないと思っていた。せっかくだから帰る前に練習をしようと思って、つい1時間半も打ち込んでしまった」。しかし同10時30分、星野の欠場による繰り上がり出場の報が届いた。

 「暑いのに練習し過ぎたと思いつつ、スタートに備えてもう1度練習しました」。昨年11月のカシオ・ワールドオープン以来となる、今季初のツアー戦出場。好機を生かして、グイグイとスコアを伸ばした。

 どうしても、この大会で活躍したい理由があった。福岡出身、千葉在住の高橋だが、キャディーを務めた葉月夫人の故郷は福島県南相馬市。先週も東北六大祭りの1つ「相馬野馬追」を訪れたばかりだ。大震災の際は、夫人の実家から400メートル地点まで津波被害を受け、義理の両親も千葉に避難してきた。

 高橋は「福島を何とか盛り上げたいと思っていました」。その一心で、この大会の予選会も受けたが、通過できなかった。それでも諦めきれず、相馬野馬追の帰りには今大会の会場を訪れ、下見までしていた。そんな思いが天に通じたのか、念願の出場権を土壇場で手中にした。

 キャディーが10人近くも倒れ、搬送されるほどの酷暑。葉月夫人は冷凍タオルを大量に準備し、懸命に戦う夫に涼をとらせた。内助の功も受けながら、バーディーラッシュで被災地をもり立てる。【塩畑大輔】