<男子ゴルフ:アールズエバーラスティングKBCオーガスタ>◇最終日◇8月31日◇福岡・芥屋GC(7150ヤード、パー72)◇賞金総額1億1000万円(優勝2200万円)

 藤田寛之(45=葛城GC)が故郷福岡で悲願の優勝を果たした。17位から出て65で回り、通算12アンダーで梁津万(36)とのプレーオフに突入。5ホール目で藤田がパー、梁がパーパットを外して決着した。藤田は4月のつるやオープンに次いで今季2勝目、ツアー通算17勝目。一昨年の賞金王は地元での初優勝に感極まって大粒の涙を流した。

 藤田が泣いた。生まれ故郷福岡の試合で初めて優勝した。人前で泣かない九州男児が、優勝インタビューでは声を上げて泣いた。「もう地元では勝てないかと思っていました」。温かく見守ってくれていたギャラリーには「ショットは全然でした。地元のみなさんの力で勝たせていただきました」と感謝した。

 奇跡的な優勝だった。首位に6打差の17位から出て、65で回り通算12アンダーとして後続を1時間半も待った。中国出身でツアー未勝利の梁と、18番553ヤードパー5を使うプレーオフに突入。互いにパーを取り合い迎えた5ホール目。藤田のドライバーショットがプレーオフで初めてフェアウエーをとらえた。

 第2打もフェアウエー、第3打は右からの逆風で、担いで4試合目になるキャディーのピーター氏と相談し、ピンまで98ヤードを「110ヤード打つ感じで」とピン上5メートルにつけた。声援を送り続ける大ギャラリーが、ひときわ大きな拍手を送ってくれた。梁は3オンに失敗、ピン奥のラフからのアプローチも4メートルオーバーした。藤田が先にパーを取り、梁が外して決着した。

 両親は福岡市東区に住む。父寛実さん(75)は心筋梗塞などを患い、自宅で静養している。母美登子さん(72)は夫の世話で、1人息子の試合を見に行けない。「2年前のこの大会で(観戦していた)オヤジが医務室のお世話になってから、見に来られなくなって…」と藤田。93年からこの大会に出場、これまでツアー16勝もしていた実力者なのに、どうしても地元福岡で勝てなかった。「早く両親に優勝を見せたくて。そしたらこんな展開で勝ててしまい、ウルウルきました。すみません」。

 福岡・香椎中2年、14歳の時、父と初めてツアーを見たのがこの大会だった。ゴルフに夢中になり始めたころで、ここにプロゴルファー藤田の原点がある。12年賞金王は、昨年は故障もあり未勝利。今季は「フェードを打つ藤田寛之の“原点回帰”の年」と位置づけた。原点に戻ることを誓った45歳が、父との思い出の地でツアー17勝目を挙げた。【町野直人】

 ◆藤田寛之(ふじた・ひろゆき)1969年(昭44)6月16日、福岡市生まれ。福岡・香椎高、専修大卒。92年プロ入り、12年初の賞金王獲得。20代1勝、30代5勝、40代で11勝と年齢を重ねるごとに勝ち星を増やす。優合子夫人(41)と2男。168センチ、70キロ。

 ◆藤田のプレーオフ(PO)

 4月のつるやオープンもPO勝ち。この日の勝利と合わせて、5勝3敗と勝ち越している。ちなみに尾崎将は12勝8敗、青木功は4勝9敗。藤田は「こちらがミスしないから、相手は嫌なはず」と、この勝ち越しを分析している。