<テニス:ウィンブルドン選手権>◇3日目◇22日◇ロンドン、オールイングランドクラブ◇女子シングルス2回戦

 【ウィンブルドン=吉松忠弘】世界57位のクルム伊達公子(40=エステティックTBC)が、惜しくも日本女子初の打倒ウィリアムズ姉妹を逃した。96年準決勝のグラフ戦以来のセンターコートで、大会5度の優勝を誇る同30位のビーナス・ウィリアムズ(31=米国)に第1セットを奪う健闘を見せたが、7-6、3-6、6-8で逆転負けを喫した。

 あと、ほんの少しだった。クルム伊達のミラクルはテニスの聖地に最後の最後で見放された。最年長での3回戦進出とウィリアムズ姉妹からの初勝利。40歳8カ月の奮闘は、惜しくも実らなかった。「負けたのは悔しいけど、自分のプレーで戦うことができた」。2時間56分の激闘の末に、最後はクルム伊達のバックがラインを割った。

 地をはうような低い弾道のボールが、ビーナスのコートに突き刺さった。185センチの巨体を、得意のカウンターショットで、何度も振り回した。クルム伊達の「カモーン!」という声が、テニスの聖地に響き渡った。96年準決勝、グラフ戦と同様に、白いハチマキが、センターコートで輝いた。「負けたけど、センターに戻ってきたのはうれしい」。満員の観客は、総立ちでクルム伊達を見送った。

 40歳が、スタートからエンジン全開で立ち向かった。まったくミスのないテニスで、一気に5-1とリードした。5オールまで追いつかれたが、タイブレークで8度目のセットポイントをもぎ取った。第2セットは落としたが、最終セットは一進一退の攻防。最後は第14ゲームでクルム伊達がサーブを落とし力尽きた。

 すべてがクルム伊達に味方した。試合前から降り出した雨で、センターコートの屋根が閉まった。風や太陽の自然に影響されない室内状態。体格やパワーで劣るクルム伊達にとって、正確にボールが打てるのは、やりやすい環境となった。

 初対戦というのも大きなアドバンテージだった。クルム伊達にとって、打ち合いは望むところ。ビーナスはいつものように豪打で攻めてきたが、クルム伊達はカウンターで何度も切り返した。またクルム伊達の放つ低い弾道の球は、現在のテニス界では異質。ビーナスは何度も戸惑い、ミスを重ねた。

 徹底した管理で、驚異の肉体と精神力を維持し続ける。08年に現役復帰してから「大きなケガをしたら、その時点でもう終わり」と言い続け、瞬発トレ、ティラピスなどを日課として体調を維持。「若いときよりもスタミナがついた」と、夫クルムさんとの時間以外は、すべてを犠牲にしてテニスに打ち込む。

 今年は、今大会までに16大会に出場し、わずか6勝しか挙げられなかった。「芝に行けば何かが変わるかも」と祈るような気持ちで今大会に出場。敗退にも復活ののろしを上げた。40歳8カ月の今大会最年長のミラクル・アラフォーが、再び不死鳥のようによみがえる。