<大相撲名古屋場所>◇初日◇11日◇愛知県体育館

 ファンの厳しい目の中で、賭博に関与したり師匠や同じ部屋の仲間が処分を受けた力士たちの名古屋が始まった。部屋の大半が野球賭博に関与したとして一時は部屋全体が謹慎処分となった阿武松部屋は、初日に出場した7力士が全敗。師匠が解雇処分を受けた大嶽部屋も1勝3敗と振るわなかった。

 軽微な賭博への関与を上申書で申告したり、野球賭博関与で同部屋に懲戒処分者が出た力士は、少なからず影響を受けた。部屋に野球賭博関与者が多く、当初は部屋全体が謹慎と勧告された阿武松部屋の力士はこの日、7人出場したが全敗だった。同部屋の十両益荒海は、はたき込みで若天狼に敗れ「出場させてもらえただけでもありがたい」と振り返ったが、賭博問題でけいこ不足は明白だった。

 当初は野球賭博を申告したが、仲介者不在の仲間内の賭博だったため、謹慎処分が出なかった西関脇琴奨菊(佐渡ケ嶽)は、自身より11センチ高い東前頭3枚目の旭天鵬に寄り切られた。同部屋の元大関琴光喜関が野球賭博で解雇となり、自身も罪の意識にさいなまれて体重は10キロも落ちた。この日も朝げいこ後の食事は10分足らず。小兵ながら懐に潜り込む得意の形が影を潜めるのは必至だった。取組後は淡々と「明日頑張ります」と、一言だけ話した。

 元大嶽親方(元関脇貴闘力)の解雇で、部屋の存続も危ぶまれた大嶽部屋も1勝3敗と振るわなかった。元大嶽親方の最後の弟子となった鬼勝は、序ノ口デビューを飾れなかった。「動揺するなというのは無理。不安で仕方なかった」と話した。同じく敗れた三段目の右肩上には「大嶽部屋をつぶせ」と、強烈なヤジが飛んだ。部屋を引き継いだ新大嶽親方(元十両大竜)は「名古屋入り当初は覇気がなかったけど、場所が近づきけいこに集中できている」と必死に前を向いた。

 一方、勝っても素直に喜べないのも事実だ。東前頭6枚目の鶴竜は、若の里を寄り切った後、場内に「反省!」というヤジが響き渡った。野球賭博以外の軽微な賭博を申告していたため「言われても仕方ない。とにかく自分の相撲を取るだけ」と受け入れた。モンゴル人だが、大のサッカー好きで、W杯サッカーで、大会前は世間の非難を浴びながら好結果を出した日本代表の岡田武史監督に例えて「いつか相撲協会も、岡田監督みたいに最後はみんなから評価されるように頑張りたい」と力を込めた。前例のない異常な状況で力士たちの名古屋場所が始まった。【高田文太】