<大相撲夏場所>◇初日◇6日◇東京・両国国技館

 新大関鶴竜(26=井筒)が、西前頭2枚目の臥牙丸(25=木瀬)を下手投げで下し、白星発進した。伝達式で観客を意識した口上を述べた通り、国技館前で車を降りて、歩いて場所入り。土俵の内外で、客を喜ばせた。史上初めて6大関が名を連ね、全員が勝利を収めた。

 午後2時40分。おかみさんが運転するBMWを降りた鶴竜は、歩いて国技館の南門をくぐった。地下駐車場まで直行できる大関特権は、使わない。館内の相撲案内所や土産物店の前を通って、西の支度部屋へ。驚く観客を縫うように、カメラのフラッシュを浴びながら、新大関として初日を迎えた。

 「1日しか来られないお客さんもいますから…」。3月28日の伝達式で「お客さまに喜んでもらえるような相撲が取れるよう努力します」と言った。公言通り、相撲でも魅せた。もろ差しから左下手で臥牙丸を落とした。「そういうことを言ったなら、そういう相撲でお客さんを喜ばせないと」と振り返った。

 昇進後、イベント出演などで多忙になった。部屋に戻れば、手形を押すための色紙が山積み。親友の玉鷲と食事できたのは、4日前に1度きり。空き時間は休養に充て、自室で映画を見た。関越道のバス事故も1日遅れで知ったほど。モンゴル人力士会の会計係を、朝赤龍に代わってもらうなど、周囲の協力も得ながら過ごしてきた。

 井筒親方(元関脇逆鉾)から「疲れ気味でしょ。もう1週間欲しかったかな」と心配されていたが、まずは白星。残る大関も勝ち、6大関時代が幕を開けた。「想像してなかったですけど、拍手とか声援をもらってうれしいですね」と鶴竜。帰る間際、横綱の敗戦を知ったが「自分のことに集中します」と話し、地下駐車場からタクシーに乗り込んだ。【佐々木一郎】

 ◆大関陣の安泰

 初日に大関全員が勝ったのは10年秋場所以来で、この時は4大関(日馬富士、琴欧洲、把瑠都、魁皇)。また初日の全5大関勝利は77年秋場所が最後(若三杉、旭国、貴ノ花、三重ノ海、魁傑)。初日に限らず、全5大関が安泰だったのは09年名古屋場所の7日目が最後(日馬富士、琴欧洲、魁皇、琴光喜、千代大海)。