<大相撲名古屋場所>◇千秋楽◇27日◇愛知県体育館

 横綱白鵬(29=宮城野)が、優勝回数を「30」の大台に乗せた。大鵬の32回、千代の富士の31回に次ぐ、3人目の偉業を達成した。2敗で並んでいた大関琴奨菊が敗れ、結びの一番で横綱日馬富士を上手出し投げで下して決めた。

 周囲が思う以上に苦難だった。白鵬は30度目優勝を決めると「苦労した感じがします。その分、達成感はあるし、うれしい。とりあえず休みたいですね」。10日目からつけた右肘のサポーターと両手首のテーピングを外すと、大きく深呼吸して水分補給した。

 2敗で琴奨菊と2人。3敗も2人。4人以上での千秋楽優勝争いは、左手人さし指を骨折した12年夏場所以来だった。場所前の滋賀・長浜合宿から稽古を積み、調子は良かった。だが序盤戦からヒヤリとする場面も多く「体はいい状態だった。体が動くからこそ、急いで結果を求めすぎて、墓穴を掘ってしまった」と強引な相撲で負けた豪栄道、稀勢の里を振り返る。優勝を決めた日馬富士戦も右四つで半身になる苦しい展開。「最後は落ち着いていこうと思いました」。左上手を取るまでじっくり待ち、出し投げを決めた。

 今年に入り、体の衰えを感じ始めたのも確か。「胸のあたりの筋肉に納得がいかないんだよね」。稽古場以外に10日に1回ほど、ジム通いも始めた。東京五輪決定時には「2020年まで現役」と宣言したが、様相は一転。春場所前の徳島での激励会で「言ってしまったことを後悔している」と吐露するなど、弱気な発言も多くなった。

 31回優勝の九重親方(元横綱千代の富士)は「あと6年なんて絶対無理。横綱には目に見えないものが体力的、精神的にはある。だから気力がなえちゃいかんと本人にも言ったことはある」という一方、「32回の優勝が近づいてきて、少なからず重圧とか不安とかも出てきているんじゃない?」と指摘した。

 早ければ九州場所で大鵬の32回に並ぶ。達成時には全国の後援会合同で海外での祝宴会も計画されている。「昭和の大横綱2人に肩を並んだという景色にいる自分が幸せ」と喜びをかみしめた。「新しい人、力が誕生することで自分も成長できる。新大関誕生はうれしいこと」。若手からの刺激が活力になる。【鎌田直秀】