人気のバトルロイヤルゲーム「荒野行動」を手がけるネットイースが、日本一を決める「2022荒野CHAMPIONSHIP -栄光の刻」を開催した。東日本、西日本決勝戦などを突破した30チームが5月末の王者決定戦に進出。最終決戦は20チーム100人によるオフラインで争われた。手越祐也(34)がテーマ曲を制作し、水谷隼(33)らアスリートがエキシビションで参戦してスポーツとのクロスオーバーを実現するなどeスポーツの新たな可能性を示す大会となった。優勝はFENNEL Mantisが手にした。

ライブ配信30万人超視聴

昨年はオンラインで行われた年に1回の大舞台は、100人の熱気があふれかえった。荒野行動は1チーム5人によるバトルロイヤルゲーム。撃破数や生き残りによって得点が加算され20チームの順位を決める。腕前だけでなくチームワークや運も必要で、若い世代を中心に人気を博している。

コロナ禍でeスポーツシーンは苦戦を余儀なくされた。大きな会場で戦う機会は失われ、戦場はオンラインが主流になった。荒野行動はリアルイベントを欲するファンに応える形で、コロナ以前に行っていた100人オフラインにこだわり大会を開催した。感染症対策はもちろん、審判を配置しフェアな戦いを用意した。

大会を彩るテーマソングは、うってつけの人物が関わった。荒野行動を「朝5時までやっちゃいますね」と話すほどの愛好家である手越が、アーティスト仲間のマイキとともに制作。プライベートで荒野行動の大会を観戦したこともある手越は「オフラインの緊張やプレッシャーで本来の力を出せなかったこともあったと思う。オンラインで誰もいない中でやるのと、誰かがいるところとでやるのと、気持ちの差が出てました」と振り返った。マイキは初めての大会観戦だったが、「ついていけるか心配したけど、優勝の喜びを体験して歌をつくってよかったと思う。もっと荒野行動を見ていきたいと思った」と興奮していた。2人がつくったテーマソングは、優勝の瞬間まで大会を盛り上げる要素になっていた。

リアルスポーツと融合

スポーツ界とのコラボという新しい取り組みにもチャレンジした。東京五輪メダリストの水谷隼や阿部一二三ら、五輪経験のある現役や元アスリート6人がプロチームとタッグを組んでそれぞれ対戦。特別配信番組として展開され大きな話題を呼んだ。水谷はプロチームREJECTのリーダーから指南され、ゲーム内では“師弟の絆"も披露した。いずれも荒野行動の経験者であるが、プロと同じ目線で取り組むことで、リアルスポーツとの共通点も感じとっていた。女子サッカーの丸山桂里奈は「後ろから声をかけられた瞬間に現役時代を思い出した」と、チームワークが必要であることを体感していた。

最終日のライブ配信の視聴者は、最大で30万人を超えていた。注目度とともに、チームのプロ化も進んでいる。昨年から始まったプロ契約には戦国ゲーミング、REJECTといったeスポーツで好成績を残すチームが名を連ねている。今回の大会でも、すでにプロ契約を結んでいる6チームは最終決戦まで進出し優勝争いを繰り広げた。

新しいプロ環境も整う。8月に開始予定のプロリーグ「KOPL(KNIVES OUT PRO LEAGUE)」には、既存のプロチームに加えて、今回の大会成績によって新たにプロ契約を結ぶ5チームが参加予定。プロ契約はチームに年間最大2500万円が支給され、選手の待遇も向上する。今回もプロ契約を目標に参加するチームが多数あった。

仲間とつかんだ勝利の先には、栄光とともにあこがれだったプロへの道が続いている。これからも荒野行動は多くのチームに夢を与え続けていく。

■Mantisが王者

Mantisが激戦を制して22年の王者に輝いた。2日間計12試合の最終決戦では残り3試合の時点で首位に立った。追われる苦しさをしのいで、仲間と涙ながらに抱きあった。リーダーのKoroa(19)は「優勝チームの名前を呼ばれたときは頭が真っ白になった。泣いているメンバーもいてもらい泣きしそうになりました。オフラインでよかった」と振り返った。

■手越祐也テーマソング

手越が荒野行動のさらなる発展に貢献する。今大会もエントリーを検討したというが「ライブがあってスケジュールがあわず」断念した。それでもユーザー目線でゲーム開発や運営にアドバイスしているという。「もっとこうなるといいな、というのを伝えている。もっと盛り上がるお手伝いをできれば」と話していた。