春季東北大会の取材で岩手に行ってきた。高校通算本塁打記録を更新中の花巻東(岩手)佐々木麟太郎内野手(3年)の一発は見られなかったが、ハイレベルな戦いを見ることができた。


17年ぶりに春の東北王者に輝いた八戸学院光星ナインは、笑顔いっぱいで記念撮影(撮影・濱本神威)
17年ぶりに春の東北王者に輝いた八戸学院光星ナインは、笑顔いっぱいで記念撮影(撮影・濱本神威)

【7日】

今春、オープンした「きたぎんボールパーク」へ。盛岡駅からJR東北線の北上行きに乗って2駅目。岩手飯岡で下車。乗車時間は7分、料金は189円。改札を出ると掃除のおじさんがいたので球場の場所を尋ねた。「この前の道を道なりに行けば着きますよ。お気をつけて」。

東北に来るといつも感じるのが地元の方のやさしさ、あたたかさ。言われた通り、とことこ歩く。緩いカーブを曲がると球場の照明灯が見えた。5分ほど歩くと歩道に「あと700メートル」の表示。15分ほど歩いて到着した。非常に分かりやすい道。これなら迷うことはないだろう。

球場からは東北新幹線の線路も見える。前日盛岡入りした際は気付かなかった。盛岡駅が近づいたら、左手に球場が見えるはず。初めての人はぜひ確認してみてほしい。

記者席が使えないためスタンドへ。ネット裏のやや三塁側、屋根の下に陣取った。試合開始を待っていると見覚えのある顔がスタンドを上がってきた。地元紙のS記者だった。ちょうど1年前、福島で行われた東北大会で名刺を交換。山形で行われた秋の東北大会にも来ていた。彼女は昨年は担当1年目ながら仙台育英の東北勢甲子園初優勝に立ち会った「持ってる記者」でもある。隣の席が空いていたので一緒に見ることにした。

第1試合は一関学院(岩手)が秋田商に逆転勝ち。第2試合は日大山形が聖光学院(福島)に延長10回、逆転サヨナラ勝ちした。日大山形のプロ注目右腕・菅井颯投手(3年)は最速147キロをマーク。この日は変化球が決まらず苦しんだが、ロッテ佐々木朗希投手のように左足をピンっと高く上げる投球フォームで、今夏注目投手の1人になるだろう。

第3試合に花巻東が登場。佐々木麟太郎は1回の第1打席で変化球を捉え、左翼フェンス直撃の二塁打を放った。この日は右から左へ強い風。第2試合で勝った日大山形・荒木監督が「この球場は右打者が有利」と話していたが、その風に逆らうことなく左方向へ流し打った。

しかし第2打席は中飛、第3打席は右飛、第4打席は遊飛に倒れ高校通算135号は出なかった。

試合は花巻東が2年生右腕・小松龍一投手(2年)の好リリーフもあり2-0で逃げ切った。

試合後、敗れた仙台商(宮城)阿波壮汰投手(3年)を取材。169センチの小柄なサイド右腕。佐々木麟太郎について聞くと「低めが強いので内角高めを攻めました。1打席目はカーブを打たれてしまいましたが2打席目からはしっかり高めに直球を投げられました」と話した。球速は120キロ台後半だったが内角高めを攻め、本塁打を許さなかった。

東北大会が行われた盛岡市のきたぎんボールパーク(撮影・福田豊)
東北大会が行われた盛岡市のきたぎんボールパーク(撮影・福田豊)

【8日】

花巻球場へ。

午前10時開始だがパソコンを使う取材スペースを確保するため8時前に球場へ。当初の情報では記者席は使えないとのことだったが、使用できることに。定員10人ほどの小さな記者席だったがこれはありがたい。無事一番乗りを果たし席を確保できた。

試合開始まで1時間以上あるので、球場の隣にあるという花巻東高校へ行ってみることに。高野連の先生に行き方を聞くと「あっちの方。行けば分かるから」とのこと。右翼スタンド後方にある駐車場を横切ると校舎らしき建物が。まさに花巻東高校だった。正門は入らず、右手の方に歩いていくと広い芝生広場。お年寄りたちゲートボールを楽しんでいた。そして散歩道を挟んで左側に花巻東の野球グラウンドがあった。ネット裏にはベンチが置いてあり見学ができる。OBの大谷翔平、菊池雄星のMLB球宴同時出場を記念したモニュメントもあったので写真を撮った。

この日、花巻東は第2試合で明桜(秋田)と対戦する。花巻東ナインも練習を開始。試合開始の10時が近づいたので球場へ戻った。

第1試合は地元岩手の公立進学校、盛岡三が日大山形に勝利。公立校とは思えないほど打撃が力強くどこからでも得点できる。12安打で6点を奪い快勝した。

第2試合は花巻東が明桜と対戦。2-5で敗れた。佐々木麟太郎は2打数無安打2四球と不発に終わった。この試合も相手投手から徹底して高めを攻められた。第1打席はいい当たりだったがセンターへのライナー。第2打席は左飛。第3打席は2死二、三塁で申告故意四球。第4打席は2死一塁で四球。後半は勝負してもらえなかった。

明桜・興石監督は「135キロ以上のストレートで高めを攻める。外野を深く守らせてフライで打ち取る」と攻略法を明かした。佐々木麟太郎へのマークは夏の大会ではさらに厳しくなるだろう。麟太郎の父親でもある花巻東・佐々木監督は「息子に限らず、小さいころから知っている選手が多いので、何とかもう一度甲子園に連れて行きたいですね」と話した。

ノースアジア大明桜対花巻東 5回裏花巻東2死二、三塁、申告敬遠で苦笑いする佐々木麟(撮影・山田愛斗)
ノースアジア大明桜対花巻東 5回裏花巻東2死二、三塁、申告敬遠で苦笑いする佐々木麟(撮影・山田愛斗)

【10日】

再び「きたぎんボールパーク」へ。

準決勝第1試合は仙台育英が3-0で盛岡三を破った。先発の高橋煌稀(3年)が7回を5安打、2番手の湯田統真(3年)が2回を無安打に抑え完封リレー。2人はともに150キロをマーク。スタンドを沸かせた。ただ初めて150キロの大台をマークした高橋が「自分では148キロくらい」と話したように新球場のスピードガンの設定はやや甘めな感じか。

第2試合は八戸学院光星(青森)が明桜に逆転勝ち。7回から登板した2年生左腕の岡本琉奨が見事な投球で3回を無安打無失点に抑えた。直球の最速は自己新の147キロ。「明日の決勝で秋の練習試合で負けた仙台育英にリベンジしたい」と意気込んだ。

鶴岡東対八戸学院光星 力投する八戸学院光星・岡本(撮影・相沢孔志)
鶴岡東対八戸学院光星 力投する八戸学院光星・岡本(撮影・相沢孔志)

【11日】

この日も「きたぎんボールパーク」へ。午前9時から軟式の決勝「専大北上-能代」が行われ、正午から硬式の決勝戦「仙台育英-八戸学院光星」が行われた。

試合は1点を争う好ゲーム。2回に光星が先発した左腕・洗平比呂のソロ本塁打で先制。4回に同点に追いつかれたが8回1死一、二塁から4番長谷陸翔(3年)の左中間を破る適時二塁打で2点を勝ち越し。その裏に1点を返されたが3-2で勝利。17年ぶり2度目の優勝を果たした。

この日は両校合わせて6人が登板。全員が145キロ以上をマーク。2人が150キロ以上。やや甘めのスピードガンとはいえ、全国上位レベルの戦いだった。敗れた仙台育英・須江監督も「肌感は甲子園のベスト8以上の試合でした」と話したほど。仙台育英は昨年に続き投手王国健在。打線が調子を上げてくれば2年連続の甲子園優勝も夢ではない。また過去に夏の甲子園2年連続準優勝の実績がある八戸学院光星は全国制覇のチャンス。今大会で快投を見せた洗平、岡本の2年生左腕コンビは強力。打線も3番中沢恒貴内野手(3年)を中心に強打者、好打者が揃った。

この他にも佐々木麟太郎が引っ張る花巻東、明桜も投打に総合力の高さを感じた。聖光学院も昨夏甲子園4強メンバー2人(高中、三好)が引っ張る打線は強力だ。今大会には登場しなかったがセンバツで1勝を挙げ3回戦で大阪桐蔭に0-1で惜敗した能代松陽(秋田)、投打二刀流で高校日本代表候補の武田陸玖投手のいる山形中央も夏の甲子園で見たいチーム。今夏もまた、東北勢から目が離せない。

8回2/3を投げ、8安打2失点と粘投した八戸学院光星・洗平
8回2/3を投げ、8安打2失点と粘投した八戸学院光星・洗平