中京大中京(愛知)が鹿児島実との名門対決を制し、16強入りを決めた。矢田崎明土(みんと)内野手(3年)が2安打1打点で先制、中押しに貢献。6回は矢田崎らの5連打3得点の攻撃で鹿児島実を振り切った。

 中京大中京が6回裏に見せた一気3得点の勝ち越し劇は、4番と監督のアイコンタクトがキーだった。1死から遊撃左を抜いて一塁に出た4番伊藤に、一塁ベンチの高橋源一郎監督(35)が目で相手攻略作戦を進行させる。「いけるのか」(監督)「いけます」(伊藤)ならば「いけるならいけ」(同監督)。二塁盗塁敢行だ。公称体重87キロの伊藤が、50メートル走6秒8の脚で必死に次の塁を奪う。伊藤が笑った。ベンチが沸いた。直後に5番矢田崎が右中間へ安打を放ち、伊藤が生還し勝ち越した。「伊藤の盗塁で、ようしと思った。4、5番の主軸で点を取って勝ちへつなぐ、目指す形ができました」と矢田崎は言葉に力を込めた。6、7、8番も安打を連ね、この回3点奪取した。

 矢田崎は、愛知大会5回戦の豊橋中央戦でも1-2とリードされた5回2死から小牧球場場外へ同点本塁打。チームの危機を救った男は、この日も前半5回まで重苦しい展開から流れを引き寄せる一打を決めた。

 愛知・新城(しんしろ)市の自宅から名古屋市の学校まで、2時間電車を乗り継いで通う。朝5時に出て7時到着、朝練習だ。練習ができればまだいい。昨年8月11日の17歳の誕生日に腰椎分離症を起こし、3カ月練習から離れた。09年夏、矢田崎が小6の時、同じ新城市出身の河合完治三塁手らが成し遂げた夏甲子園優勝を見て、中京大中京で日本一を目指すと誓った。つらい時期を乗り越え、故障を克服、今年は前日18歳になったばかりの大舞台でチームを勝利に導いた。

 初回に5連打で3得点した初戦(岐阜城北戦)に続く2試合連続の集中打。過去最多7度の夏甲子園優勝を誇る古豪が、日本一へジワリと前進した。【宇佐見英治】