<全国高校野球選手権:智弁和歌山8-7白樺学園>◇14日◇2回戦

 道勢史上初の満塁本塁打も実らず。北北海道代表の白樺学園は、2回戦で智弁和歌山(和歌山)に延長10回の末、逆転サヨナラ負けした。7回1死満塁からエース小林航(3年)が起死回生の満塁弾。8回には佐々木駿捕手(2年)が左越えアーチ、延長10回には幸運なポテン適時打で終盤2度勝ち越したが、最後は守備のミスもあり逆転負け。強豪校の底力に屈したが、2試合連続2ケタ安打で夢舞台に足跡を残した。

 白樺学園が持てる力を全て出した。「お前らかっこいいな」。試合後、戸出直樹監督(35)の言葉が全てだ。劣勢の展開から同点、2度の勝ち越し。最後は三塁手のバント処理が一塁への送球ミスとなり、延長10回逆転サヨナラ負け。それでも強打の智弁和歌山と互角の打撃戦を演じた。4万7000人の大観衆に「白樺野球」を見せつけた。

 反撃の号砲はエースの3番小林だった。4点を追う7回表1死満塁。初球の116キロカーブを思い切りたたいた。ラインドライブのかかったライナーが左翼ポール際に吸い込まれる。大歓声で本塁打と気づき、100メートル12秒の快足でダイヤモンドを駆け抜けた。

 右肩痛から復調し先発マウンドを任されたが、制球を乱し1回途中で降板。「投手として活躍できなかったので、打撃で活躍したかった」。高校通算16本目のアーチは、春夏を通じて甲子園の道勢史上初の満塁弾だ。意地とプライドを凝縮させた一振りで、一気に試合を振り出しに戻した。

 82年夏に帯広農で甲子園に出場した小林の父和彦さん(47)は「鳥肌が立ちました。まさか満塁本塁打なんて」。家では野球の話をほとんどしない。小林は「父が甲子園に出ていたというのは去年知りました」というほど。「野球では、もう超えている」。29年ぶりにやってきたという聖地で息子の成長を実感した。

 エースの意地に女房役も応えた。8回表、佐々木は小林と同じカーブをとらえた。「打った瞬間、入ると思った。手応え十分だった」。相手のお株を奪うチーム2発目。この試合、初めてリードを奪うも、その裏に同点を許し「次を抑えれば勝てると…」。涙が止まらなかった。

 10回には“神風”も味方した。2死二塁、佐藤の打球はフラフラと右翼方向へ飛んだ。滞空時間の長い飛球は右翼から左翼方向へ吹く浜風に流され、中前にポトリ。最大瞬間風速8・7メートルを記録するほどの強風も味方に付けたが、強豪撃破はならなかった。

 最後は智弁和歌山の粘りに屈したが、打線は2試合連続2ケタ安打。2戦連続延長戦を戦いきったナインを、戸出監督はたたえた。「こんな大舞台で智弁和歌山相手に力を出してくれた」。北海道の高校野球史に残る激闘が白樺学園の新しい財産になる。【木下大輔】