<全国高校野球選手権:大阪桐蔭10-2日本文理>◇8日◇1回戦

 ゴジラの前で、ゴジラを超えた!

 大会NO・1スラッガー大阪桐蔭・森友哉主将(3年)が左へ右へ、技術とパワーの2連発でスタンドの度肝を抜いた。この日、18歳の誕生日を迎えた森友は史上27人目、通算29度目の2打席連続本塁打など3安打4打点と大暴れ。元ヤンキース松井秀喜氏(39)が見守った開幕日の試合で、星稜(石川)時代の同氏を抜きさる甲子園通算5本塁打をマークした。夏連覇を目指す大阪桐蔭は日本文理(新潟)に圧勝、史上7校目の偉業へ第1歩を踏み出した。

 鮮やかな、パワフルな2本のアーチに甲子園がどよめいた。レフトポール際へ技で運んだ甲子園4号。浜風を切り裂くようにパワーで右翼スタンドに突き刺した同5号。「甲子園だったから打てました」。森友は晴れやかな笑顔で、バースデーアーチを振り返った。

 3-1で2点リードの2回。森友が打球を打ち上げたとき、左翼手は捕球体勢に入った。しかし、ずるずる後退し、外野フェンスに背中をつけても打球は落ちて来なかった。浜風を味方に付けた高校通算37号。「こすった当たりでしたが、風に助けられました」。甲子園名物を利用して運んだのは森友のうまさだ。

 技ありの次はパワー。5-1の4回は135キロの直球をフルスイングし、浜風にケンカを試みた。右翼スタンドへ突き刺さる同38号。「シンではないが、しっかりスイングできました」。昨年の春夏連覇時に愛用していた銀色のバットで、12年夏の光星学院(青森)・北條史也(阪神)以来の2打席連続アーチ。左右に打ち分けて、新たな記録を刻んだ。さらに5回2死満塁では痛烈な2点適時打を放ち、甲子園の通算打率は4割8分9厘、11打点に。「甲子園に来ると打てる気がする。何かがあります」。まさに申し子だ。

 この日の2本には、バースデー以外の大きな意味があった。元ヤンキース松井氏が見守る前で放った。92年夏の明徳義塾(高知)戦で5打席連続敬遠された大打者は、森友にとっても伝説の人。「小さいころ、巨人の中心打者だった。左打者で長打力がある。すごい方だと思っていました」。その松井氏が星稜時代に残した本塁打数を、この日超えた。

 18年前の「8・8」。3190グラムで生まれた。6歳の誕生日は母由美さん(44)に連れられ、宮崎駿監督の映画「千と千尋の神隠し」を見に行った。普段は仕事で忙しい母だけに、2人で出かける機会はめったになかった。誕生日の朝、保育園に送ったとき、由美さんは「きょうは早く迎えに来るからね」と約束。仕事を早めに切り上げて迎えに行くと、先生から「朝から大変だったんですよ」と、ずっと大興奮状態だった話を聞かされた。あれから12年…今は森友が母をワクワクさせている。

 自分で祝った劇的な2発。森友は「最高です」と笑った。夏連覇へ、18歳のバースデーから伝説の夏が始まった。【堀まどか】<森友哉(もり・ともや)プロフィル>

 ◆生まれ

 1995年(平7)8月8日、大阪・堺市生まれ。

 ◆球歴

 5歳から「庭代台ビクトリー」で野球を始め、当時は三塁手兼投手。東百舌鳥中では「堺ビッグボーイズ」に所属。大阪桐蔭では1年秋から背番号2でベンチ入りし、昨年は1年先輩の阪神藤浪らと史上7校目の春夏連覇を達成した。昨年の夏の甲子園後、第25回IBAF18U世界選手権で高校日本代表の正捕手も務めた。

 ◆運動能力

 50メートル走6秒2。遠投100メートル。握力は左右ともに55キロ。

 ◆気分転換

 アクション映画鑑賞。

 ◆好きな言葉

 なせばなる。

 ◆好きな食べ物

 じゃがいも。嫌いな物は特になし。

 ◆得意なスポーツ

 野球以外では卓球。

 ◆好きなタレント

 お笑いタレントの中川家。

 ◆得意な科目

 数学。

 ◆サイズ

 170センチ、80キロ。右投げ左打ち。