<全国高校野球選手権:花巻東9-5彦根東>◇13日◇2回戦

 花巻東(岩手)が彦根東(滋賀)を下し甲子園通算10勝目を挙げた。2回に2点を先制すると、打線に火が付き15安打9得点。抽選会以降に徹底してきた「左腕対策」と、岩手大会を勝ちぬくために磨いた打力を発揮。西武菊池雄星を擁し4強入りした09年夏以来の初戦突破を果たした。3回戦は17日第1試合に決まった。

 4年ぶりに校歌を聖地に響かせた。最後に勝ったのは、西武菊池雄星を擁し4強入りした09年夏の準々決勝明豊戦。その間、偉大な先輩・日本ハム大谷翔平が2度挑戦しても出来なかった甲子園1勝を、スター不在の後輩たちが成し遂げた。佐々木洋監督(38)は「久しぶりに勝てた。選手たちにありがとうと言いたいです」と勝利をかみしめた。

 5日の抽選会後、地元花巻から4人を呼び寄せてまでした「左腕平尾対策」が功を奏した。2回表、彦根東の先発左腕・平尾拓也を捉えた。1死一塁から6番太田亮佑外野手(2年)の右越え適時三塁打、茂木和大内野手(2年)の中前適時打で2点を先制。4回までに8安打を重ねた。右打者の茂木は「左は苦手だったけど、これからは好きになるかもしれません」。立ち位置を変えるなど、徹底的に行ってきた練習が試合でそのまま生きた。

 小技でも相手エースを苦しめた。3回表。先頭の2番打者千葉翔太外野手(3年)は7度ファウルを打ち、13球目で四球をもぎとった。普段からファウル打ちを練習している千葉は「自分の持ち味が出せた」と満足げ。第1打席も9球粘った末に内野安打するなど、平尾に7回2/3で142球投げさせる結果につながった。佐々木監督は「(ファウルが)ボディーブローのように効いた。MVPです」と千葉をたたえた。

 岩手を勝ち抜くために打力を鍛えた。強打を誇る盛岡大付に、昨夏の岩手大会決勝で大谷を打ち崩され、新チームでも春に完封負けを喫した。堅守が売りのチームだが、春以降はライバルに勝つため、バッティングの練習を全体の2割から6割程度に増やした。多い時で2000スイング。「打つ意識が強くなった」と佐々木監督。攻撃力が5年ぶりの勝利につながった。

 聖光学院、仙台育英、弘前学院聖愛、日大山形に続き東北勢5校目の初戦突破。東北5校以上が勝つのは史上初で、花巻東にとっても甲子園通算10勝目と歴史的な1勝となった。だがここでは終わらない。「目標は雄星さんたちが達成したベスト4超えです」と山下駿人捕手(3年)。スターはいなくても、積み重ねた自信を胸に先輩超えを目指す。【高場泉穂】