<全国高校野球選手権:福井商2-1聖光学院>◇15日◇2回戦

 7年連続出場の聖光学院(福島)は福井商(福井)に敗れ、3年連続の2回戦敗退となった。1点を追う6回2死一塁。今秋ドラフト候補の4番園部聡内野手(3年)が、あと数十センチでバックスクリーンに入るほどの中越え適時三塁打を放ち、同点としたが、8回裏に勝ち越された。4季連続で甲子園に出場し輝きを放った園部は、後輩に夢を託し、次のステージへ向かう。

 奇跡は起こらなかった。1-2で迎えた9回2死三塁。三塁走者の園部は、9回2死の同じ状況から同点に追いついた福島大会決勝を思い浮かべていた。「もしかしたら、と思っていました」。だが代打・伊藤颯外野手(3年)の打球は無情にも高く舞い上がり、左翼手のグラブに収まった。園部は、そのままゆっくりと走りホームへ。「何も意識せずホームを踏みました」。大会屈指の打者として注目された最後の甲子園が終わった。

 それでもバットで会場をどよめかせた。2回は二飛、4回は三ゴロと、2打席は福井商の背番号10右腕長谷川凌汰(3年)に手玉に取られたが、1点を追う6回2死一塁で2球目のストレートを捉えた。バットの先に当たり「センターフライかな」と思った球は、ぐんぐん伸びフェンス際のクッションの上に。3季連続のバックスクリーン弾にはあと数十センチ届かなかったが、同点タイムリーで勝負強さを見せつけた。

 12年春から4季連続で甲子園でプレー。12年センバツ横浜戦で痛恨のエラーをしたことがきっかけで、守備を必死に練習した。昨夏と今春に見せた2季連続バックスクリーン弾は、全国に名を知らしめた。「自分らしくいられるグラウンド。今までやってきたことを表現できるようなグラウンドだった」。甲子園は成長を実感できる場だった。

 2度の甲子園ホームランボールは、2歳の時に父・厚さんを亡くして以来、女手一つで育ててくれた母知子さん(53)に渡してきた。今回も3つ目を贈るつもりだったが、かなわなかった。園部は「ありがとう、ここまで来れましたと言いたい。打ってボールと勝利をプレゼントしたかったけど、何か感じ取ってくれたと思う」。

 中学時代まで「いつ帰ってくるの」と勤務先の母に電話したほどの甘えん坊だったという園部。高校3年間で心身ともに成長し、負けても涙はみせず最後まで堂々と胸を張った。「後悔はないといいたいけど、悔しい思いしかない」。静かに悔しさをかみしめた。

 この日先発で好投した石井成(2年)は中学時に所属した福島・いわき市内の軟式選抜チーム「いわき松風」からの仲間。ピンチの度にグラウンドでほっぺをつかんで励ましてきた。「成を含め、この悔しさを力にしてくれれば」。後輩に「日本一」の夢は託す。

 「思い出作りに来たわけじゃない」と土は持ち帰らなかった。聖光と甲子園で育った福島の主砲は、次の輝く場所を見つけに行く。【高場泉穂】