メジャーでは先発投手を早いイニングで交代させ、リリーフを次々とつぎ込む投手起用で成功する球団が増えている。今季ナ・リーグ覇者のドジャースや昨季世界一に輝いたカブスなどがすでにそのスタイルで結果を出しているが、来季はその傾向がさらに球界に広がりそうだ。実際、今オフ、メッツが先発投手への負担を軽くしリリーフを充実させる編成へ転換する方針を打ち出した。

 メッツといえば、実力派の若い先発投手がそろい、投手王国を築けるチームと評されてきた。2015年にワールドシリーズに進出したときは27歳のデグロム、26歳のハービー、22歳のシンダーガードがローテの中心におり、先発陣は向こう10年安泰だとまでいわれていた。

 しかしこの2年間、その投手陣から故障者が続出し、チームも低迷。ハービーはまだ20代であるにもかかわらずすでに故障がちで球速も落ち、今季はわずか19試合の登板。100マイル超えの剛速球を投げるシンダーガードも、今季は右背筋を痛め5月から9月下旬まで約5カ月離脱した。投手王国が作れるほどの投手がそろっていても、故障などによって強力ローテがあっという間に崩壊することもある。この2年間のメッツは、それをどの球団よりも実感した。

 そこでサンディ・アルダーソンGMは「現在のメジャーのトレンドは、先発投手がどんどん短いイニングしか投げないようになっている。その分、レギュラーシーズでもポストシーズンでもリリーフの存在がより重要になってきた」と話し、今オフは救援投手の補強に力を入れることを明言した。来季、先発投手は5回をめどに交代させる起用法に転換していく可能性が高いという。

 今年のポストシーズンでも、先発投手が5回までで交代する試合が目立った。先発が降板した後、複数のリリーフで継投するパターンもあったが、アストロズなどは先発投手を2番手で起用して長いイニングを投げさせ、1試合を第1先発と第2先発の2人でまかなわせる試合もあった。今後はレギュラーシーズンでも、1試合で2人の先発投手を起用するケースが出てくるかもしれない。それには先発を6人体制にする必要があるだろうが、メジャーは来季からシーズン中の休みをこれまでより4日増やすため、投手陣をやりくりする上で今までより余裕が出るだろう。

 そんな状況の中で、大谷翔平選手がポスティングシステムでメジャー移籍するのは、まさに絶好のタイミングだ。1度の登板で長いイニングを投げない、先発が6人体制となれば、それだけ先発投手の負担が減り、二刀流をやりやすくなる。大谷を受け入れる土壌が、自然と作られているのが今のメジャーだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)