とうとうオリンピックにメジャーリーグの選手が出場するのかと驚いたのもつかの間、さっそく雲行きが怪しくなってきた。

世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のフラッカリ会長は、13日に2028年の米国ロサンゼルスで開かれるオリンピック(五輪)に、米大リーグ側からトップ選手の参加を確約する文書を受け取ったと明かした。選手会も合意しているとした。

しかし、27日にMLBのマンフレッド・コミッショナーは、ロス五輪に合わせたシーズンの中断は厳しい考えを示した。ワールドシリーズの第1戦に「シーズン中にMLB選手が大会に出場することはみんなが期待している。だが、試合は毎日行われており、レギュラーシーズンは厳格なものと捉えている。我々にとっては重要なこと」と話した。「シーズン中断せず=トップ選手不参加」とは言い切れないが、どうもスッキリしない。

メジャーリーガーたちは、リーグや選手会からどう説明を受けているのか。カージナルスのラーズ・ヌートバー外野手(26)に取材できる機会があったので聞いてみた。「我々選手は正式なメッセージを受けていないので、何とも言えない。5年後、そういう機会があればプレーしたいと思う」。故郷のカリフォルニアでの開催だが「5年先で正式に決まってないのでそこまで思いは至っていないが、チャンスがあればプレーしたいし、言われて(初めて)ロサンゼルスだと実感している」と話すにとどめた。

MVPを2度獲得しているフィリーズのブライス・ハーパー(31)は17日に「野球を発展させるには、最高峰の舞台で広めるべき」とコメントし「米国代表のユニホームを着て、最高レベルの大会でプレーしたい」と話した。今春WBCには出場を熱望しながら右肘手術でかなわなかったこともあり「五輪に出場することは長年の夢」とも述べている。

これまで大リーグは、メジャーリーグのトップ選手の出場を拒んできた。00年シドニー、04年アテネ、08年北京五輪、21年東京五輪でメジャー選手の出場を認めず、マイナーリーグの選手でチームを構成してきた。特に21年の東京五輪は、20年2月に、ベンチ入り26人を除く40人枠の選手には出場を認めると報道されたが、結局1人も入らなかった。

今春のWBCが盛り上がったのは、大谷翔平(エンゼルス)をはじめとして、トラウト(エンゼルス)、ベッツ(ドジャース)、アレナド(カージナルス)、ディアス(メッツ)、アクーニャ(ブレーブス)らトップ選手が出場したからだ。マイナー選手では、たとえ自国開催でも盛り上がらないのは自明の理。他の競技と合同の大会である五輪でこそ、なんとか野球の世界普及へとつなげてほしい。東京五輪の日本代表だった山崎康晃投手(DeNA)は、母がフィリピン出身で「お母さん側の親族の方が、一気に携帯の画面が僕になったり、待ち受けが僕になったりしたと言っていた」。野球がメジャースポーツでない国にも、影響を及ぼすことができる。

問題は今季、WBCに出場した大谷やトラウト、ディアス、アルカンタラ(マーリンズ)らが故障したように、保険だろう。五輪は、国を代表する栄誉こそあるが報酬がなく、保険金の設定も困難だ。カーショー(ドジャース)はWBC出場を熱望していたが、保険が折り合わずに断念した。給料を払っている球団側からすると、リスクだけを背負う形にもなりかねない。ましてやロス五輪は春先ではなくシーズン中だけに、故障は即、ペナントレースに重大な影響を及ぼす。どうにかリーグや五輪組織委委員会で、うまい落としどころを見つけてほしいが、妙案が見当たらない。【斎藤直樹】

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「斎藤直樹のメジャーよもやま話」)

日本対米国 試合前、米国の国旗を手に先頭で入場するトラウト(2023年3月21日撮影)
日本対米国 試合前、米国の国旗を手に先頭で入場するトラウト(2023年3月21日撮影)