MLBではロックアウトが継続し活動停止が続いているが、傘下のマイナーリーグではまた新たな歴史が作られた。現地12日、ヤンキースは傘下のローA、フロリダ州リーグに所属するタンパ・ターポンズの監督にレイチェル・バルコベックが就任すると発表したのだ。マイナーリーグの歴史において初の女性監督となる。

34歳のバルコベック監督はクレイトン大学とニューメキシコ大学でソフトボールの捕手を務め、卒業後ルイジアナ州立大で運動学の修士号を、オランダのヴリエ大で人間運動科学の修士号を取得。2012年にカージナルスの臨時ストレングス&コンディショニングコーチとなり、アストロズを経て、2019年にヤンキースがマイナーリーグの打撃コーチとして招へいし、今回選手育成のシニアディレクターからの昇格となった。

バルコベックの昇格を決定した選手育成担当ケビン・リース副社長は、「野球の準備ができているか、受け入れ側の準備ができているかという議論が、山ほどあったわけではありません。最高の人材を見つけ、ここでインパクトを与えるために最高のポジションにつけようとしているのです」とコメントしている。バルコベックの専門知識と指導力を非常に評価しているという。

一昨年マーリンズのGMにキム・アング氏が就任し、北米の男性プロスポーツ史上初の女性GMの誕生が話題になったが、そのアング氏を1998年にアシスタントGMとして迎えたのが、ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMだった。アング氏退任後も同じ職にやはり女性のジーン・アフターマン氏が就いている。そのキャッシュマンGMはバルコベック監督について「彼女は決断力がある。彼女は強い。彼女は忍耐力がある」と語っている。

実際、性別による障壁は大きかったようだ。2012年にカージナルスの臨時職後、多くのチームに履歴書を送ったものの、返事をくれたのは1チームだけ。そのチームの担当者も上司がストレングス&コンディショニングの役割の女性を雇うことを許可しない、と話したのだとか。その後も欠員が出たチームに電話すると同じことを言われたという。対策として履歴書の名前を男性名の「ライ・バルコベック」に変えたら、電話がかかってくるようになったとも話す。

その後2014年にカージナルスがフルタイムのストレングス&コンディショニング・コーディネーターとして呼び戻し、キャリアがつながるようになった。

それでもバルコベック監督のソーシャルメディアにはネガティブなコメントが投稿されることもあるようだ。ただバルコベック監督は「私にとっては愉快なことです。だってアメリカンドリームですから」と意に介していない。