ヤンキース田中将大投手(28)が、インディアンスとの地区シリーズ第3戦に先発し、窮地のチームを救うポストシーズン初勝利を挙げた。負ければ敗退という崖っぷちで迎えた一戦で、7回をわずか3安打に抑え、7奪三振無失点に抑える快投を演じた。一番大事な試合で最高のパフォーマンスをやってのけ、ヤ軍の日本投手としてもポストシーズン初白星を手にした。

 田中が右手でグラブをたたきながら、雄たけびを上げた。4回1死。何としても失点したくない場面で三塁打を浴びた後、3番ラミレスに2-2からスプリットで空振り三振、4番ブルースも追い込んでスプリットで連続空振り三振を奪い、メジャーではマウンド上でほとんど見せなかった感情を表に出した。

 相手先発カラスコもほぼ完璧な投球で無失点を続けていた。白熱した投手戦の中、奪った7三振はすべてスプリットだった。スライダーの切れが良く、速球は最速95マイル(約153キロ)と走っていた。ジラルディ監督は「速球がいいと、他の球種が威力を増す。それが今日の投球だった」と振り返り、田中も「(速球は)しっかりと気持ちのこもったボールが投げられた。いろんな部分でのバランスは良かったと思います」と胸を張った。

 仲間にも助けられた。6回1死一塁で、第2戦で満塁弾を打ったリンドアに右翼へ本塁打性の大飛球を打たれたが、ジャッジがフェンス際でもぎ取り、失点を阻止。7回には、田中と仲の良いバードがソロ本塁打を放ち、均衡を破ったところでお役御免となった。「やっぱりガッツポーズ出ましたね。よしっ、てなりました」と興奮気味に話す田中に、バードは「マサがすごい投球をしてくれていたから。まだシーズンは終わらないよと思った」と笑った。

 2年前のワイルドカードゲームでは5回を2失点で敗れ、地区シリーズに導けなかった。「こういう試合で投げて勝つために、ここに来たと思っている」と言い切った。窮地を救う一戦に「そういう状況が、おいしい場面だとは思っているんで。プレッシャーの中でやることがプレーヤーとしての喜びでもあると思う」と重圧を力に変えた。【水次祥子】