【クリーブランド(米オハイオ州)11日(日本時間12日)=水次祥子】ヤンキース田中将大投手(28)が、今季3度目のシャンパンファイトで勝利の美酒に酔いしれた。ヤ軍はインディアンスとの地区シリーズ第5戦に5-2で勝利。2連敗後の3連勝という劇的な展開で、リーグ優勝決定シリーズにコマを進めた。第3戦で7回無失点の快投でシリーズの流れを一変させた殊勲の田中は、今度は苦手としているアストロズとの戦いに挑む。

 いつもとは景色が違った。田中は勝利の瞬間、ブルペンからグラウンドへ駆けつけた。何としても勝たなければならない最終戦で、必要とあらば救援で投げるつもりだった。メジャーでは初めてのブルペン待機に「モニターがないんで、本当に外野のファンの方々と目線が同じなんで。やる方からしたらやりづらいですね」と笑った。

 先発の左腕サバシアが5回途中2失点で降板すると、中継ぎ右腕ロバートソン、守護神チャプマンが2人で4回2/3を無失点。完璧な救援で勝利をたぐり寄せた。そのため田中のリリーフ登板は実現しなかったが、今シリーズではMVPと言っても過言ではない働きぶりだった。

 ヤ軍が地区シリーズ2連敗後に3連勝したのは、アスレチックスに勝った01年以来16年ぶり。流れを変えたのは、まぎれもなく田中。ジラルディ監督は「(第3戦で)1-0の試合に勝った。田中が見事な投球をしてくれた」と振り返り、キャッシュマンGMも「田中の投球は劇的だった。あれが難しい仕事を成し遂げる第1歩になった。チームを本当に引っ張ってくれた」と感謝した。

 ただ、次はもっと大きな舞台が待っている。ワールドシリーズ進出をかけ、アストロズとのリーグ優勝決定シリーズに臨む。敵地で13日(日本時間14日)からスタートし、田中は第1戦か第2戦の先発が濃厚だ。

 アストロズ戦にはレギュラーシーズンで過去4度先発。0勝2敗、防御率10・38と打ち込まれている。今年5月の対戦では4本塁打を浴び、自己最短タイの1回2/3しかもたず、自己ワーストタイの8失点でKOされた。それでも田中は「やるしかない。しっかり準備して臨むだけ」と静かに闘志を燃やす。

 この日のシャンパンファイトは今季一番の盛り上がり。1時間近くも続いた。ずぶぬれの田中は「これまでと違って、自分が少なくとも貢献できたんで。一番うれしいです」と晴れやかな表情を見せた。だが喜ぶのはほんのひととき。「自分たちはワイルドカードから上がってますし、自分たちよりも勝っているチームしかいないので」と、さらなる高みを目指し、気を引き締めて球場を後にした。

 ◆田中のアストロズ戦 今年は1試合に登板も、4本塁打を浴びるなど自己ワーストを更新する8失点を喫し、2回途中降板。通算4度の登板でも0勝2敗と勝利がなく、防御率は対戦経験のある23球団の中で最も悪い10・38。また15年にはワイルドカードゲームで対戦し、2本塁打を浴びて負け投手になっている。