#TSUTSUGOチャレンジ-。レイズ筒香嘉智外野手(28)の打撃論を軸にした「日米比較論」の第3回は「潜在的な打撃フォーム」に迫る。NPB現役最多の415本塁打を誇る西武中村剛也内野手(36)の幼少期からの習慣も照らし合わせた。

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メジャーリーガーのド迫力な放物線は、アッパー気味な豪快なスイングと大きなフォロースルーから生まれる。メジャー最多762本塁打のボンズやジャッジ、スタントン(ともにヤンキース)らスラッガーのスイング軌道は共通項が多い。筒香は、幼少期の打撃練習スタイルにルーツがあると分析した。

「アメリカでは、子どものころから『ホームランを打て、遠くに飛ばせ』と教えられる。子どもたちにバッティング練習をさせる時は、フェンスのすぐ手前から打たせる。そこから徐々にホームベースに近づかせていく。まずはフェンスを越えるホームランという喜びを教えていく」

打撃は目の前にそびえるフェンスを越すところからスタートする。「だからバットが下から出てアッパー気味なフォームが主流になる。プロになると、コーチは『上から打て』と微調整する。その感覚で上から打つと、彼らの感覚ではちょうど平行になる。日本は、まず『ゴロを打て』と教えられ、上からたたくようなフォームが主流になる。そうなれば飛距離は劣る」。スイングのルーツをさかのぼれば、日米の概念に必然的な差が生じる。

筒香少年は小学2年のときに和歌山ニューメッツで野球を始めた。中学では堺ビッグボーイズに所属し、4番として30本塁打をマークした。横浜高では高校通算69本塁打。超高校級スラッガーとしてプロ入りした。ハマの主砲から侍ジャパンの主砲となり、メジャーの門をたたいた。「僕はスラッガーではないと思っている。ホームランはあくまでも結果。体とバットの感覚が一致した時、どんな打球が打てるかが大事になる」。

ボールを遠くに飛ばすことは、あくまで魅力の1つ。やみくもにバットを振ることを嫌う。いかにシーズンを通して数字を生み出すか。カギは「高め&内角の真実」にあった。【為田聡史】(つづく)

 

〇…現役最多415本塁打の西武中村は、生粋のホームランアーチストとして育った。「小さい頃は、とにかく打球を飛ばすことを考えていた」。大きな体は幼少期から変わらなかった。だから5歳から始めた野球で、打球飛距離は同年代の中でも群を抜いていた。でも力任せの打撃ではない。自宅の屋上にネットを張って、ティー打撃を毎日欠かさなかったという。ボールとバットの接地時間をより長くするイメージで、フォロースルーの大きな打撃フォームを強く意識。おかわり君の土台を築いた。

昨季はプロ18年目の36歳にして、30本塁打を記録した。「しっかりスイングできて甘い球がくれば、しっかり打球を上げてホームランにする練習をしてますんで」。豪快であり、きれいなフォームから繰り出す高く大きな放物線は、おかわり君の代名詞。「ホームランは野球の醍醐味(だいごみ)」という打撃力に、いまだかげりは見せない。