ア・リーグ最優秀指名打者(DH)に贈られる「エドガー・マルティネス賞」の受賞者が29日(日本時間30日)に発表され、エンゼルス大谷翔平投手(27)が初受賞した。今季は打者で打率2割5分7厘、46本塁打、100打点、26盗塁の結果を残し、登板日以外にDHでチームに貢献した。日本人選手とエンゼルスで初の受賞者となり、同一年にMVPとのダブル受賞はメジャー史上初。DHでNO・1の称号を得て、11月の表彰ラッシュを「11冠」で締めくくった。

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今年のDH最強はやはり大谷だった。後半戦で失速し、本塁打王は逃したが、最後までタイトル争いを繰り広げ、強打者の存在感を発揮。ポストシーズン進出に貢献したアストロズのアルバレスらDHの候補選手と比べ、本塁打、打点、得点、長打数、盗塁、OPS(出塁率+長打率)でトップの成績を残し、文句なしの受賞となった。

今季は開幕から進化した打撃を見せてきた。攻められることが多かった高めの速球や内角球に対応し、本塁打を量産。数字上では分が悪いとされてきた左腕に対しても46本塁打のうち18本塁打を放ち、苦手イメージを払拭(ふっしょく)した。打率は右投手の2割5分4厘に対し、左投手には2割6分3厘。弱点とされ、相手から攻められてきた投球コースや球種に加え、左腕も攻略した打者・大谷は、相手にとって驚異の存在だった。

1973年に始まった同賞で、本塁打は歴代5位に入る。26個の盗塁数は受賞者の歴代最多22個を上回るトップで、長打力と走力を両立した万能ぶりが際立つ。10月に続き、11月も表彰ラッシュとなり、11日(同12日)にDH部門でシルバースラッガー賞を獲得。18日(同19日)は、史上19人目となる満票でア・リーグのMVPに輝いた。最後は初の「エドガー・マルティネス賞」受賞し、「11冠」で今月を締めくくった。

12月7日(日本時間8日)には米専門誌スポーツ・イラストレーテッド選出の「スポーツパーソン・オブ・ザ・イヤー」の発表を控える。野球の枠を超え、今年のスポーツ選手で最も優れた選手をたたえる栄誉。二刀流・大谷が選ばれるか、注目される。

○…エドガー・マルティネス賞の受賞者は、専門テレビ局MLBネットワークの番組内で発表された。エンゼルスの主砲といえば、メジャーNO・1外野手とも呼ばれるトラウトだったが、番組の司会者は「彼はMLBが欲していたスター。ここ数年、マイク・トラウト、マイク・トラウト、マイク・トラウトだった話題が、大谷に変わった」と評した。

近年、エ軍はトラウトら右の強打者が多く、左の長距離砲は貴重な存在だった。投打の二刀流で打者としての出場はDHに限られる。長打と打点を稼げる左打者として、チームの期待に応える打撃に徹してきた。だが、メジャー2年目の19年は打者に専念しながら、1年目に比べて本塁打数が減少。期待に応えられず、「一番悔しいシーズン」と言った。打撃を改良し、進化を遂げた4年目、本塁打、打点、長打数ともに他球団の候補選手を抑えてトップ。名実ともに、最強のDHとなった。【MLB担当=斎藤庸裕】