今季の大リーグでは、投打二刀流でMVPに輝いた大谷翔平投手(27=エンゼルス)の歴史的な偉業が並んだ。9勝&46本塁打&26盗塁。数ある記録の中で、大谷はMVP受賞時に「けがなく1年間できたことが一番良かった」と話した。そこで今回は、人間離れした鉄人ぶりにこだわった。

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◆158勤4休 18年の渡米後、同年10月に右肘を手術。19年9月に左膝手術。20年には再び右肘を痛め、昨季まで年間を通した二刀流はなかった。今季は一転、シーズン162試合のうち欠場は4試合だけ。欠場のうち2試合はDHが使えないナ・リーグ本拠地。1試合はダブルヘッダーの1試合目、もう1試合はマドン監督が「彼が望んだのではなく私の考え」とストップをかけたもので、アクシデントによる欠場はなかった。

◆出場率 今季158試合以上出場した選手は全30球団で18人しかいない。過去に16人がプレーした日本人野手を見ても、シーズン158試合以上に出たのはイチロー(9度)と松井秀喜(3度)だけ。野手専念でも難しい試合数を二刀流で乗り切った。出場数÷チーム試合数の出場率は98%。二刀流の元祖ベーブ・ルースの主な登板シーズンと比べても、ルースが最も休まなかった1919年の94%(出場130、欠場8)を上回る。

◆規定クリア プロ入り初めて規定打席に到達した。ルースが史上唯一の2桁勝利&2桁本塁打(13勝、11発)を記録した1918年は382打席で、現在の規定打席(チーム試合数×3・1)を当てはめると9打席不足している。

◆DH解除 登板23試合のうち、投打同時出場は20試合。DH解除は19試合で、自己最多の5試合(日本ハム時代の16年)を大きく更新した。73年のDH制採用後、シーズン19度も解除した選手はもちろん初めて。過去は76年ケン・ブレット(ホワイトソックス)の2度が最多で、常識的には見られない起用。DH解除は、早く降板するとチームの攻撃力低下を招く。重圧がある中、DH解除時に9勝1敗、投球6イニング以上13度で責任を果たした。

◆16連戦 今季は16日間連続出場が1度、13日間連続が3度、10日間連続が3度あった。ちなみに日本ハム時代の最長は6日間連続だから、次元が違う。7月のオールスター期間中も、休むどころか本塁打競争で69スイング、翌日の試合で史上初の投打同時先発と、逆に体力を消耗した。本拠地のロサンゼルスから時差3時間の東部で8カード、同2時間の中部で9カード対戦。8月10日にはブルージェイズとのダブルヘッダーで2試合ともスタメン出場。投手から右翼に回る「三刀流」は4試合あった。

◆無制限 日本ハム時代、登板前日と翌日は休んでいた。登板前後のスタメンは唯一、16年9月22日に優勝を争ったソフトバンク戦で登板翌日に出た例があるだけ。日本で1度しかなかったのに、今季は登板前日のスタメンが20度、翌日が18度もあった。特に疲れているはずの登板翌日スタメンでは18試合で9本塁打だから、パフォーマンスは落ちなかった。マドン監督ら首脳陣は特別扱いをやめ、無制限での力を試した。結果を伴わなければ今後の二刀流起用を見直す考えもあり、最終試験といえる1年。大谷は休まずに完走して答えを出した。【織田健途】(おわり)

<日本人投手の2021年>

◆沢村(レッドソックス)

FAで渡米。6月4日ヤンキース戦では2回で5三振を奪った。7月に右上腕三頭筋の炎症で負傷者リスト入り。8月には新型コロナウイルスに感染したが、55試合に登板しポストシーズン進出に貢献。リーグ優勝決定シリーズで3試合に投げた。

◆前田(ツインズ)

年間60試合制の昨季は6勝1敗、防御率2・70で地区Vに貢献し、今季は開幕投手の栄誉も手にした。だが、4月に連続2試合で被本塁打6本など不本意な投球が続き、5月に右脚内転筋、8月に右前腕の張りで負傷者リスト入り。9月1日には右肘の靱帯(じんたい)再建手術を受けた。来年4月で34歳。本格復帰は35歳シーズンと見られ、あと44勝の日米通算200勝へ足踏みとなった。

◆菊池(マリナーズ)

日本人左腕では初めて複数回となるシーズン3度の2ケタ奪三振をマーク。4月29日アストロズ戦では7回1死まで無安打の快投を見せた。自己最長の6試合連続クオリティースタート(先発6回以上、自責点3以下)も記録。オールスター戦にも選ばれた。後半戦1勝5敗の失速が響き、シーズン全体では7勝止まり。課題は年間を通じての安定感。FAとなり、来季所属は未定。

◆有原(レンジャース)

日本ハムから移籍1年目。先発ローテとして開幕し、4月は6試合に登板。日本で未経験の中4日先発もこなしながら3試合目に初勝利を挙げた。5月下旬、右肩動脈瘤(りゅう)を手術し離脱。9月に復帰するもアピール機会は少なかった。2年目はマイナーからのスタートに。

◆ダルビッシュ(パドレス)

カブスからパドレスに移籍して1年目。開幕投手を務め、オールスター戦に選出されるなど前半は7勝3敗、防御率3・09だった。6月には試合数、投球回ともに史上最速で米通算1500奪三振をマークした。7月に左股関節周辺の炎症で離脱してから、成績は暗転。後半は1勝8敗、防御率6・16に終わった。米通算79勝は野茂(123勝)に次ぎ、黒田に並ぶ日本人2位。

<日本人野手の2021年>

◆筒香(レイズ→ドジャース→パイレーツ)

3球団でプレー。パイレーツでメジャー3人目の代打3打数連発や、日本選手では09年イチロー以来12年ぶり2度目の逆転サヨナラ弾。パ軍43試合で8本塁打、25打点。FAで4球団から打診がある中、パ軍と再契約。

◆秋山(レッズ)

3年契約の2年目は左太もも裏、右太もも裏の負傷もあり、満足なシーズンを送れず。外野手としての守備力は高く評価されるが、渡米後2年続けて本塁打ゼロとパワーを示せないのが厳しい。