エンゼルスは1日(日本時間2日)、大谷翔平投手(28)と年俸調停を避け来季3000万ドル(約43億5000万円)の1年契約で契約合意したことを発表した。

 

【解説】 エ軍と大谷の新契約は、公式戦終了目前でもあり、電撃的な大型昇給となった。ただ、通常、オフの1~2月前後に予定される年俸調停を早めに回避したにすぎず、大谷の去就が確定したわけではない。

各球団の方針次第だが、調停権を持つ有力選手に対しては、FA(フリーエージェント)前に長期契約を提示するケースが近年の傾向。マリナーズの新人フリオ・ロドリゲスが今年8月、最大18年、4億7000万ドル(約681億円)で契約したのは特例にも近いが、あくまでも「1年」と限定したところに、エ軍と大谷の代理人側の、それぞれの思惑が見え隠れする。

今年8月、オーナーのモレノ氏が球団売却計画を発表したエ軍にとっては、今回の年俸3000万ドルが大谷の評価の基準となるメリットがある。すべては新オーナーの意向によるとはいえ、長期の契約延長を進めるにしても、トレードで放出するにしても、今回の契約が「たたき台」になるため、いずれの交渉も進めやすい。大谷の代理人側にすれば、来オフのFA市場での最低ラインが設定されたわけで、史上最高額を更新する4500万ドル(約65億円)超も現実味を帯びる。

つまり、大谷の来季年俸を見直すことが、新契約の目的。20年1月、レッドソックスはムーキー・ベッツとの年俸調停を避け、当時最高額の2700万ドル(約39億円)で契約。そのわずか1カ月後、ドジャースへのトレードを成立させた。裏を返せば、高額年俸を負担しても大谷を必要とする球団があれば、トレード交渉が進む可能性は十分。今オフから来季へかけて、大谷の去就が波乱含みである状況に変わりはない。【MLB担当=四竈衛】